最新記事

ウクライナ情勢

紛争続くウクライナ東部、親ロ派リーダーを爆殺したのは誰か

Pro-Russia Separatist Leader Killed in Explosion

2018年9月3日(月)19時00分
クリスティナ・マザ

9月2日、ウクライナ東部ドネツクで、暗殺されたザハルチェンコの死を悼むために集まった人々 Alexander Ermochenko-REUTERS

<ロシア政府の「工作員」ともされるザハルチェンコは権力を使って私腹を肥やしていた>

ウクライナ東部ドネツク州で31日、カフェで爆発が起き、親ロシア派武装勢力の指導者が死亡した。

地元メディアによれば、死亡したのはウクライナからの分離独立を目指す「ドネツク人民共和国」首相のアレクサンドル・ザハルチェンコ(42)。他に2人が負傷した。

ドネツクを含むドンバス地方の独立を求める親ロシア派とウクライナ政府との間では2014年以降、武力紛争が続いている。ロシア政府は、先週の事件を受けてすぐにウクライナ政府の犯行だと非難した。

「(停戦を定めた2015年の)ミンスク合意を実行に移し、紛争を解決する方法を探す代わりに、ウクライナ政府の好戦派はテロを行い、この地域の困難な状況をさらに悪化させている」と、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は声明で述べた。

ウクライナ東部の武力紛争に終止符を打つことを目指したミンスク和平プロセスには、ウクライナとロシア、アメリカ、EU(欧州連合)、OSCE(欧州安保協力機構)の代表者が参加。これまでのところ一時的な停戦にはこぎ着けたものの、長期的な解決の処方箋は見つかっていない。OSCEは停戦監視団を派遣しているが、今も小規模な衝突や砲撃は続いており、これまでに紛争による死者は1万人を超えたとみられる。

犯罪者にロシアの武器と資金が渡った

「ロシア政府は、先週の爆発はウクライナ政府の仕業だったと主張している。ウクライナの情報当局にこの種の攻撃を実行する能力があることは間違いない。だがロシアも(ウクライナの首都)キエフで暗殺を行ってきた。死者は数人か、もっと多いかも知れない」と、アメリカの駐ウクライナ大使だったジョン・ハーブストは本誌に語った。

停戦合意が成立しても、「停戦ラインを挟む砲撃がなかった日は1日もなかった」と、ハーブスとは言う。「砲撃の大半はロシアによるものだが、攻撃は両側から来る。ドンバスでは毎週のようにウクライナ人が犠牲になっている」

ザハルチェンコの死は、ウクライナ東部情勢の混乱ぶりを示していると指摘するアナリストもいる。現地では武装勢力同士がロシアへの影響力をめぐって対立している。

「ザハルチェンコの暗殺は、ロシア占領下のウクライナ東部の不安定さを示している。ザハルチェンコはロシア政府の工作員で、彼の元にはロシアから多額の資金や軍事力が流れ込んでいた。

それで大きな権力を手にしたのだが、ザハルチェンコはその権力を使って私腹を肥やしていると多くの人が考えていた。

彼の率いた自称『政府』と武装勢力の大部分を構成していたのは、長年犯罪に関与してきたはみ出し者たちで、ロシア政府の支援の下、かなりの武器や資金を手にした」と、シンクタンク「大西洋協議会」のエイドリアン・カラトニッキー上級研究員は本誌に語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、イランとの攻撃の応酬続く レバノン南

ビジネス

米PCE価格指数、1月前月比+0.3%・コア+0.

ワールド

26年度予算案が衆院通過、審議時間は大幅減 参院で

ビジネス

英GDP、1月単月は横ばい イラン戦争で先行きに懸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中