最新記事

インドネシア

黒煙上げて沈没する老朽軍艦 近代化目指すインドネシア海軍、9カ月で2隻失う痛手

2018年9月14日(金)17時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

燃えさかるインドネシア海軍のミサイル艇「レンチョン622」(左)と同型艦「Keris 624」 (c) Antara TV / YouTube, TNI-AL

<中国の南シナ海への進出などで海洋警備が課題のインドネシア海軍だが、使っている艦船の多くは建造から数十年も経過したお古。新造艦の予算が取れる一方で老朽艦がオシャカになる事故も続く>

インドネシア海軍第3艦隊(西パプア州ソロン基地)所属のミサイル艇が9月11日、火災を引き起こし沈没する事故があった。乗員37人は全員無事だったが、海軍は2017年12月に続いて2隻目の保有艦艇を事故で失ったことになり、事態を重く見た海軍が詳しい原因調査に乗りだした。

インドネシア東部の西パプア州ソロン海軍基地に真水の補給に向かっていた同基地艦隊所属のミサイル艇「レンチョン622」がソロン沖合で火災を起こし、その後沈没する事故が起きた。

参考記事:インドネシアが中国に対抗、南シナ海の一部海域に独自の新名称

火災は11日の午前7時頃、同艇のエンジンルームから出火し、消火活動もむなしく艇全体に延焼。乗員は脱出して難を逃れたものの、船は黒煙を上げて炎上し続け沈没した。エンジンルームのガスタービンが予期せぬトラブルに見舞われ停止した直後に出火したとしており、何らかのエンジントラブルないし技術的問題が生じたとの見方が強い。

同艇が海上で黒煙とともに炎上する様子は地元インドネシアの民放テレビで大々的に流され、海軍関係者は衝撃を受けている。

領海内の外国不法漁船の摘発が任務

それというのもインドネシア海軍では、別のミサイル艇「シバル847」が2017年12月にマラッカ海峡を航行中に天候不良が原因とみられる浸水事故でえい航中に沈没する事故を起こしており、過去9カ月の間にミサイル艇2艇を沈没で失ったことになるからだ。

「レンチョン622」は主にインドネシア東部のバンダ海、マルク諸島周辺、スラウェシ島東部海域のセレベス海などのインドネシア領海で操業する外国の不法漁船の取り締まり、摘発活動に当たっていた。この海域では主にベトナム、台湾の漁船が不法操業をしており、同艇はミサイル艇という小回りが利く艦艇として、違法漁船の発見、追跡、拿捕が業務だった。

またマラッカ海峡で浸水事故を起こした「シバル847」は主に同海峡を活動海域としている海賊や海上武装集団の監視警戒行動をその任務としていた。

このように海洋法執行機関の艦船不足、人員不足から海軍は本来の任務に加えて不法操業する漁船対策や海賊対策に駆り出されているのが実状で、その大半が旧型艦船や海外から購入した中古艦船のため、故障や事故が頻発しているという。

実際、マラッカ海峡で浸水事故を起こした「シバル847」ミサイル艇は1968年オーストラリアで建造された艦艇で、1973年にインドネシアに引き渡されて以来運用している旧式艦艇だったという。


火災を引き起こし沈没するインドネシア海軍のミサイル艇「レンチョン622」 Antara TV / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、エヌビディア株を25年第4四半期に

ワールド

米国土安全保障省報道官が退任へ、強硬な移民対策への

ワールド

イラン外相、米との核協議で「指針となる原則」で大筋

ビジネス

米ワーナー、パラマウントに1週間の交渉期間 上積み
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 7
    アメリカが警告を発する「チクングニアウイルス」と…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中