最新記事

ベネズエラ

ベネズエラ、デノミで経済がマヒ状態 商店は閉じ人々は引き籠る

Venezuela Shuts Down as New Currency Is Introduced

2018年8月23日(木)16時00分
デービッド・ブレナン

デノミ後、引き出した新札を眺める女たち(8月21日、首都カラカス) Marco Bello-REUTERS

<政府の大胆なインフレ対策や仮想通貨導入も、誰にも信じてもらえない本当の危機>

経済危機に陥っているベネズエラ政府が8月20日、ハイパーインフレの抑制を狙って、通貨単位を5ケタ切り下げるデノミを実施した。翌8月21日、市民は新通貨の流通に困惑し、ベネズエラの経済活動は麻痺状態になった。

その日、デノミ後の混乱を心配して数千軒の商店が休業し、多くの市民は仕事に行かず、家に引きこもった。

ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は政令で8月20日を銀行休業日とし、翌日に新通貨「ボリバル・ソベラノ」(Bs)が本格的に流通を始めた。米紙ワシントン・ポストによれば、旧通貨からゼロが5ケタ削除されることで、名目上は、インフレ率は自動的に約90%削減できる。首都カラカスでは、コーヒー1杯の値段が250万ボリバルから、25Bsに変わった。

だが市民が新紙幣を入手するのは容易ではない。カラカスにあるATMでは1度に10Bsしか引き出せず、引き出し上限額が設定されている、と英BBCは報じた。

反マドゥロ派は、抗議のためのゼネストを呼びかけた。野党指導者のアンドレス・ベラスケスは、6割近い商店が呼びかけに応じて店を閉めた、と主張した。「これは抗議の最初の一歩にすぎない。最終的には、無期限ストを呼びかける」と言う。だが、多くの企業や商店が店を閉めたのは、抗議のためというより、新通貨の導入に伴う混乱を避けるためだったとみられる。

1日5000人が国外脱出

マドゥロ政権は財政破綻を回避するため、他にも対策を打ち出している。最低賃金を9月1日から34倍に引き上げる措置や、付加価値税の引き上げ、燃料補助金の削減などだ。

国産仮想通貨「ペトロ」とBsを連動させることも発表した。通貨の信用回復を狙うベネズエラ政府は、ペトロの価値について、豊富な埋蔵量を誇るベネズエラの原油を裏付けにしている、と説明する。だが専門家はその信憑性を疑問視する。米政府はすでにペトロでの取引を禁止しているし、仮想通貨のウェブサイト「ICOindex.com」はペトロを「詐欺」とみなしている。

深刻な経済危機のせいで、ベネズエラからは多くの国民が逃げ出している。国連の推定では、すでに230万人以上が脱出し、出国者は一日5000人前後に上る。その多くが、コロンビアやエクアドル、ブラジルなどの近隣諸国に向かった。

ベネズエラからの難民の大量流入で、現地住民との間に緊張も生まれている。ブラジルでは8月18日、国境付近に作られた複数の難民キャンプを地元住民が襲撃する事件が発生。レストランの店主をベネズエラ難民が激しく殴打した、という報道に怒った住民たちの仕業だった。ブラジル政府はベネズエラ難民を保護するため、軍隊や警察の出動を余儀なくされている。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス・スキーリゾートのバーで爆発、約40人死亡・

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    米中関係は安定、日中関係は悪化...習近平政権の本当…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中