最新記事

投資

急落トルコリラ「底値」見誤りさらに大損する投資家の心理

2018年8月14日(火)13時00分
中村 貴司(東海東京調査センター主任調査役シニアストラテジスト) ※東洋経済オンラインより転載

トルコリラ、「ここまで下がったらチャンス」と考えたくもなるが…… Murad Sezer - REUTERS

日本の投資家の関心の高い高金利通貨の代表格の1つ、トルコリラの下落はどこで止まるのでしょうか。

日本人投資家はリラ最安値更新でさらなる痛手

トルコリラは前週末の8月10日、対米ドルや対円で前日比一時20%以上下落。13日に入っても過去最安値を更新。日本人投資家が主に手がけている対円相場でも、1トルコリラ=15円台まで急落する場面がありました。

まずはトルコリラが急落した背景を簡単に見てみましょう。8月10日「欧州の大手銀行のトルコ向け債権に対する懸念を強めている」というECB(欧州中央銀行)関係者の発言が報じられたことで、投資家の不安が高まったことがあげられます。

また同日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、「われわれとトルコの関係は現在よくない!」とツイート。トルコから輸入する鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ50%、20%の追加関税を課すと表明しました。一方、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は同日、国民への演説で「枕の下のドル、ユーロ、金を銀行でリラに両替すべきだ」「ドルがわれわれの道を阻むことはできない。心配無用」と述べ、対米強硬姿勢を強める発言をしました。こうしたやりとりなどから、かつてのギリシャ危機のように「トルコ発の信用不安」が懸念され、アメリカとトルコの対立に落としどころが見えないことなども嫌気され、トルコリラ安が一気に進む形となったわけです。

前回の「なぜ日本人はトルコリラで大損をするのか」でも触れましたが、今回のトルコリラ急落に日本の投資家はうまく対処することができたのでしょうか? 結論から言いますと、筆者のまわりの多くの投資家は「高金利通貨が下落している今は絶好の投資チャンスだ」と考え、短期的なトルコリラ高にかけ、新規にポジションを拡大させたものの、トルコリラ急落でロスカットもできず、さらに損失を拡大させる残念な結果になってしまいました。では、なぜ残念な結果になってしまったのかについて今回も「行動ファイナンス」の視点から見ていきたいと思います。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中