最新記事

韓国社会

韓国版「働き方改革」にイエローカード? 炎天下での長時間労働でドラマ撮影スタッフが過労死

2018年8月10日(金)17時14分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

SBSはドラマ「三十ですが十七です」の6日の放送で、次回予告の後に亡くなったスタッフAさんを追悼するメッセージを流した。SBS放送画面より

<日本同様、観測記録を更新する酷暑に見舞われている韓国。そんな炎天下で長時間労働をしていた若者が過労死した。文在寅大統領の働き方改革は可能なのか?>

今年の日本の猛暑は連日ニュースでも大きく上げられるほど深刻な問題になっているが、お隣りの韓国も日本と同じく今年は記録的猛暑だ。8月5日には、江原道の洪川で韓国気象観測始まって以来の最高気温となる40.3度を観測した。日本に負けないくらいの"酷暑"になっているが、韓国は冬は零下15度にもなる事を考えると、夏冬の気温差は50度にもなる。日本より寒暖差が激しく、その分問題が深刻化している。日本同様、熱中症で病院に運ばれる人も今年は多く3438名。そのうち42名が亡くなったという(8月7日現在)。

この記録的猛暑は、テレビ界にも影響を与えている。特に野外ロケの多いバラエティ番組は出演者とスタッフの健康を考慮して野外撮影を中止したり、野外撮影自体減らしているという。KBSの人気番組「ハッピーサンデー1泊2日」は野外ロケがメインの番組だが、8月3〜4日に予定していた撮影をスタッフの健康状態を考慮して中止したと発表。続いて他の地上波放送局MBCとSBSも、気温が上がる昼には室内撮影をし、日が落ちてからロケをするようスケジュールを調整しているという。

SBS関係者は「現在スタッフには十分に休憩時間を提供し、週68時間以内の撮影を徹底している」と発表した。しかし、そのSBSの人気ドラマ「三十ですが十七です」の撮影スタッフが過労死するという悲劇が起こり、韓国国内では放送関係スタッフの労働環境なども含めて問題視され、波紋を呼んでいる。

問題となったドラマ「三十ですが十七です」は7月からスタートしたSBSのラブコメディー。今最も人気がある若手俳優ヤン・セジョンとシン・ヘソンが主役を務めることで放送開始前から注目を集めていた。

この番組の撮影スタッフのAさん(30歳)は、7月31日自宅で亡くなっているのを発見された。8月3日には解剖の結果、死因は内因性脳出血だったと発表されたが、普段Aさんは健康に何の問題もなかったたことから、撮影スケジュールが連日の猛暑のなか行われるなど、「テレビドラマの撮影現場での劣悪な制作環境が今回の死因に関係している。これは過労死ではないか?」という指摘が集まった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃

ワールド

シリアで米兵ら3人死亡、ISの攻撃か トランプ氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 10
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中