最新記事

世界貿易戦争

赤字は本当に悪い? 今さら聞けない貿易戦争の基礎知識

SEVEN QUESTIONS ABOUT TRADE CONFLICT

2018年7月25日(水)16時10分
ニューズウィーク日本版編集部

Q5. 世界の為替や株価にはどう影響する?

貿易戦争が過熱して経済が停滞すれば、世界的に株価は下がる。7月初めに対中追加関税が発動された後、日米の株価は上昇しているが、中国株は先行き不安から下落傾向が続いている。ドル為替市場は先行き不安が強まればドル安、出口が見えればドル高に動く。

Q6. WTO(世界貿易機関)は何をしている?

トランプが中国を相手に貿易戦争に踏み切ったのは、WTOによる知的財産権の保護が不十分、という不満からだ。確かに2001年にWTOに加盟した後も、中国企業がアメリカの技術を「模倣」するケースが後を絶たない。しかし、加盟国の主権に手出しできないWTOでは取り締まりに限界がある。

WTO加盟国は自国の関税率がWTOの関税率より高かった場合、より安いWTO関税を優先しなければならない。いわゆる最恵国待遇だ。WTOは同時に、各国が自国産業を守るため緊急に輸入制限するセーフガードも認めている。アメリカはセーフガードも数多く準備しており、トランプ政権は今回、通商法などのセーフガードを使って「例外的」に関税率を上げた。

加盟国に限ってではあるが、WTOは国家間の貿易紛争を調停できる唯一の機関だ。しかし保護主義の台頭を抑え切れず、信頼性が揺らいでいる。

Q7. 保護主義と自由貿易主義、勝つのはどちらか。

世界的に自由貿易体制が広がると、自由貿易圏内で弱肉強食が強まる。その結果、弱い立場の農家や労働者が淘汰される。イギリスのEU離脱(ブレグジット)や保護主義を掲げたトランプ大統領の登場は、グローバル化への反動でもある。貿易戦争は勝者なき戦いだが、保護主義の台頭を防ぐためには、グローバル化の行き過ぎに歯止めをかけることも必要だ。

※本誌7/31号(7/24発売)「世界貿易戦争」特集では、トランプの背後にある思想から、保護主義100年史、中国の裏ワザ報復措置、アメリカとEUやカナダ、南米との対立まで、トランプが宣戦布告した貿易戦争の世界経済への影響を検証。米中の衝突は対岸の火事ではない――。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中