最新記事

中国

「墨かけ女子事件」は中国民主化運動に発展するか?――広がる「習近平の写真に墨汁」

2018年7月17日(火)16時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

拘束されてしまったのだろう。

やがて董瑶けいのツイートがネットから全て削除され、アカウントも封印されてしまう。

友人や家族が携帯に電話しても、すでにつながらない状態になっていた。

連鎖反応を起こした中国人民

ネットには多くの書き込みが溢れた。

●あなたは誰もがやりたいと思っていてもできないでいることを実行に移したのだ。

●誰もが、この息詰まりしそうな空気の中で沈黙し続けることに限界を覚えている。でも勇気が持てないでいる。あなたはわれわれに勇気を与えてくれた。あなたこそが英雄だ。

●この暗黒の中国大陸では、能力や学問がどんなにあっても役に立たない。独裁政治に抗議する勇気を持ってこそ、英雄になれる。 

●中国は人民のものだ!共産党は出ていけ!

しかしそれらは次々に削除されていき、中国大陸以外の海外の中文ネットが動き始めた。

たとえば「零点時刻」「明鏡TV」あるいは「中国公民抵抗運動」などが、「墨かけ女子」事件とともに、その後の連鎖反応を報道している。

たとえば広東省の王文彬も7月6日に習近平の顔に泥を投げつけて拘束されている。北京市高級(上級)裁判所の門の壁には「腐敗」「暗黒」などの文字が墨で書かれ、看板はかけられた墨で文字が読めなくなっている。習近平の顔に牛の糞を投げつけた画像もある。

各地から撤去された習近平のポスターや肖像

この動きが拡散して民主化運動に発展するのを恐れたのだろう。当局は各地で習近平の写真やポスター、あるいは持ち運びできる大きさの肖像を撤去する命令を出し始めた。

たとえば北京市西城区にある不動産管理会社では、7月12日、「48時間以内に習近平の写真やポスター、肖像、記念品などを全て撤去して、業務完遂後、その結果を直ちに報告せよ」という特別通知を発布した。

また湖南省長沙市でも中国の指導者のポスターなどが撤去され、代わりに「社会主義的価値観」を表す「富強、民主、文明、自由、平等、公正・・・・・」などの文字が大きく掲げられたが、それらの文字にも、やはり墨がかけられている

新華網が華国鋒元主席の「個人崇拝禁止」の記事を掲載

同時に中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」が「華国鋒はまちがいを認めた」という見出しで、1978年に当時の華国鋒主席が個人崇拝を戒めた記事を掲載した。それはすぐに削除されたが、大陸以外の中文メディアが、その痕跡を報道している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エアバスに偏らず機材調達、ボーイングとの関係変わら

ビジネス

独IFO業況指数、4月は予想上回り3カ月連続改善 

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強

ワールド

イランとパキスタン、国連安保理にイスラエルに対する
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中