最新記事

米ロ関係

国際政治の初心者と黒帯の対決? 米ロ首脳会談「軍配」の行方は──

2018年7月13日(金)17時30分

7月9日、フィンランド首都ヘルシンキで16日に予定される米ロ首脳会談に臨む就任18カ月のトランプ米大統領(右)に対して、ロシアのプーチン大統領(左)は、世界の表舞台で18年以上も活躍する経験豊富な、規律と細部にこだわる指導者だ。写真右はNY市で2016年5月、同左はモスクワ郊外で2016年1月撮影(2018年 ロイター/Ivan Sekretarev/Pool/Lucas Jackson)

フィンランド首都ヘルシンキで16日に予定される米ロ首脳会談に臨む就任18カ月のトランプ米大統領に対して、ロシアのプーチン大統領は、世界の表舞台で18年以上も活躍する経験豊富な、規律と細部にこだわる指導者だ。

事実と数字で武装したプーチン大統領は、今回の首脳会談で改めてロシアの不満を表明し、トランプ氏から、見返りを与えずに何かを引き出す方法を探るだろうと、米国の元当局者は予想する。

トランプ氏は6月12日の米朝首脳会談で、空手形になりかねない非核化の約束を金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長から得た代わりに、米韓合同軍事演習の中止に合意した。

プーチン大統領はこのことを強く覚えているはずだ。

「米朝会談を見て、同じように値踏みしてくるだろう。トランプ大統領は米朝会談で、具体的な見返りを得ることなく、米国が手にする重要なカードを切ってしまった」と米国の元高官は言う。「プーチン大統領は、少なくともそのような成果を求めており、そのためにはお世辞を言ったり、約束したりして、巧みに協議を操ることも辞さないだろう」

その一方で、プーチン大統領は、クリミア併合の正当化や米国による自国に対する制裁緩和、軍縮における譲歩など、ロシアが最終的に望みを手に入れることを期待しつつ、トランプ氏が勝利宣言できるような成果を見いだそうとするかもしれない。

「プーチン氏は長期戦の構えだろう。これは投資であり、外圧緩和に向けた一歩と考えている」。こう語るのは、元駐ロ米大使で国務副長官も務めたビル・バーンズ氏だ。ジョージ・W・ブッシュ、オバマ両大統領がそれぞれプーチン氏と行った首脳会談に関わった経験がある。

「自尊心をくすぐることは賢いやり方だと、理解することになる」とバーンズ氏は語った。

2016年の米大統領選において、自身の選挙陣営とロシアの共謀疑惑を巡り捜査を受けているトランプ氏だが、冷戦時代の敵対国ロシアと良い関係を築きたいと繰り返し語っている。だが、ウクライナやシリア、そして各国の選挙に干渉しているとの疑惑を巡り、ロシアと西側諸国は緊張状態にある。

トランプ大統領は、柔道の黒帯を持つプーチン氏との会談に臨む際、十分な準備を怠らず、やみくもに本能的直感に頼るべきではないと、民主党のオバマ前政権で駐ロ米大使を務めたマイケル・マクファウル氏は警鐘を鳴らす。

「トランプ大統領は人生の大半を外交政策に費やしてきたわけではない。一方、プーチン大統領は人生の大半において外交政策や国家安全保障問題に取り組んできた」と同氏は指摘。「トランプ氏は経験値でプーチン氏に負けており、周到な準備が必要だ」

プーチン大統領は、持論で武装し、自信に満ちた態度で説得力を発揮する可能性があるとマクファウル氏は言う。「彼の解釈には欠陥があり、経験による裏づけに欠けるところもあるが、話をする際には効果を発揮する」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中