最新記事

日本企業

JALとANA、「台湾」表記問題で見せたこだわり 中・台双方に配慮し試行錯誤

2018年7月31日(火)15時38分
劉 彦甫(東洋経済 記者)※東洋経済オンラインより転載

日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は、「台湾」の表記問題で最後まで試行錯誤を繰り返した(撮影:尾形文繁)

世界中の航空会社が台湾の扱いをめぐって困惑した。今年4月、中国の航空行政を管轄する中国民用航空局(民航局)は、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)を含む航空会社44社に対し、台湾を中国の一部とする「一つの中国」原則に反する表記を正すよう通達した。

具体的には、各社の予約サイト上にある「台湾」の表記を「中国台湾」などと表記することを求めたとみられている。民航局は航空各社に対し、7月25日までに表記変更を行わなければ、中国市場へのアクセスを規制するなどと揺さぶりをかけた。

航空会社全44社が表記変更に応じた

同局は7月26日、通達を出した44の航空会社すべてが表記変更に応じ、うち40社がすでに変更を完了したと発表。残るアメリカン、デルタ、ユナイテッド、ハワイアンの米航空4社も変更作業中だとした。

newsweek20180731160300.jpg

独ルフトハンザドイツ航空は、「台湾(Taiwan)」から「中国台湾(Taiwan, China)」という表記に変更した(画像:同社予約サイトをキャプチャ)

通達があった4月25日以降、大半の航空会社は中国の求めに応じ、「台湾(Taiwan)」から「中国台湾(Taiwan, China)」へと、台湾を中国の一部と明確に示す表記に変更していた。

米ホワイトハウスは5月5日に声明を出し、中国当局の通達を、国家が監視する社会の恐ろしさを描いた「(ジョージ・)オーウェル作品のようなばかげたもの」と批判。米航空各社に中国の要求に従わないよう求めた。企業側は「アメリカ政府の動きに合わせて対応する」として態度を保留していた。

7月25日の期日が迫った段階で、米各社は台湾の都市に限り、「台北(Taipei)」や「高雄(Kaohsiung)」など、「台湾(Taiwan)」を外して都市名のみを表記する方式に変更した。結果として限定的だが表記変更に動いた。アメリカン航空の広報担当者は、「航空輸送はグローバルビジネスであり、事業を展開している各国の規定に従うしかない」と説明している。

その一方でJALとANAは、中国、韓国、台湾を「東アジア」という地域でひとくくりにし、その中で都市名のみを表記する方式を採用した。実は、JALとANAの日系2社が取った「台湾」表記問題への対応は、海外の他社とは異質なものだった。表記方法について、最後まで試行錯誤を繰り返したのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中