最新記事

欧州経済

EU最優等生ドイツの「泣き所」 出遅れたデジタル化

2018年7月1日(日)16時25分

高速インターネット接続に関する経済協力開発機構(OECD)の2017年調査によれば、先進国34カ国のうち、ドイツは29位に低迷しており、日本と韓国が上位を占めている。

メルケル首相は、ドイツが抱えるデジタル基盤の不備に対処することを、最後とみられる首相4期目の優先課題と位置づけ、「われわれの未来の繁栄はそれにかかっている」と警鐘を鳴らした。

ドイツ政府が直面する課題の大きさを指摘する企業経営者や政策当局者は、ドイツ企業がなぜ、データの共有保存やワークフロー管理に向けたデジタル技術の採用に出遅れているのか、その背景を語った。

高速インターネットの不備は、障害の1つだと彼らは指摘。

また、政府の非効率性や、働き方の新たな方法を受け入れることに消極的な、ドイツの「ミッテルシュタント」と呼ばれる中小企業も障害となっている。さらに、ナチスドイツや共産党支配による長年の監視のせいで、多くのドイツ人はデータ共有に懐疑的だという。

また、強いドイツ経済が、現代化に向けた取り組みを阻むという「パラドックス」も存在する。受注対応に忙しすぎる企業は、将来のデジタル化を計画する暇がないというのだ。

政府のデータも問題の深刻さを物語っている。

ブロードバンド網を拡大するために設立した政府ファンドは昨年、利用可能資金のわずか3%しか使われなかったと、シュパーン副財務相(当時)は同僚議員に宛てた1月23日付の書簡で示している。

それ以来、シュパーン氏は、多くの経営者が「ファクス時代」にとらわれているドイツは、米国のライバル企業と比べて最大20年遅れをとっていると語っている。

ドイツの誇る自動車産業でさえ脅威を感じている。

かつて、中国企業はドイツの自動車メーカーから学ぼうとしていた。だが、5月に中国を訪れたメルケル首相は、データ処理で中国が見せた進歩に大きな衝撃を受け、電気自動車や自動運転車の開発支援を求めた。中国はまだそれに応えてはいない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

戦場の成果、米との和平協議に「前向きな影響」=ロシ

ビジネス

ユーロ圏のインフレ、今後数カ月は2%前後で推移=ラ

ビジネス

中国人民銀、一部銀行の債券投資調査 利益やリスクに

ワールド

香港大規模火災、死者159人・不明31人 修繕住宅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 5
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 9
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中