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EU最優等生ドイツの「泣き所」 出遅れたデジタル化

2018年7月1日(日)16時25分

 6月25日、高速インターネット接続に関するOECDの2017年調査によれば、先進国34カ国のうち、ドイツは29位に低迷。メルケル首相は、デジタル基盤の不備に対処することを優先課題とし、「われわれの未来の繁栄はそれにかかっている」と警鐘を鳴らした。写真は、リリウム社のウェブサイトに掲載されているギルヒング上空でテスト飛行する垂直離着陸ジェット機。4月撮影。同社提供写真(2018年 ロイター)

ドイツ東部のエンジニアリング企業では、今年3月まで、搬入された荷物が生み出す山のようなペーパーワークやマニュアルでの照合作業に何時間も費やしていた。

だが最近では、倉庫担当のロニー・ミュシャ氏は、他部門の状況が即座にアップデートされる特別なアプリを使って、タブレットで納入管理を行っている。時間はほんの少ししかかからない。

この会社、ツェムラー・ジーバンラゲンを創設したハイコ・ツェムラー氏は、政府が支援するスキームが、デジタル技術に対する「心理的バリアを取り除いてくれた」と語る。

この在庫管理アプリは始まりにすぎないと、ツェムラー氏は期待を寄せる。いつの日か、自社の溶接工や組立ライン作業員が、共有プラットフォーム上で設計計画や部品リストにアクセスできるようになることを望んでいる。

こうしたことは全て、米カリフォルニア州から韓国に至る現代の工場では、しごく当たり前のことだ。だが、ここでは問題がある。彼の会社が現代的な工場に生まれ変わるためには、大量のデータを送受信できる高速インターネットケーブルが必要なのだ。

「多くの人がブロードバンドを利用しているが、残念なことに、私たちは、まだ利用できない」。ポーランド国境からそう遠くないブランデンブルク州にある自社工場でツェムラー氏はそう語った。

何十年も産業イノベーションの先頭を走ってきた欧州最強の経済大国ドイツだが、デジタル時代への適応が進まず悪戦苦闘している。同国の政策当局も、そのことを危惧している。

ツェムラー氏の経験は、変革を阻む2つの主な障害の存在を示している。そもそも、デジタル技術を彼の会社が受け入れるには、政府の後押しが必要だった。それを受け入れてからは、同社の計画はお粗末なブロードバンド網に悩まされている。

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