最新記事

安全保障

陸上迎撃ミサイル「イージス・アショア」運用費5000億円超に 当初から6割増

2018年7月30日(月)16時44分

7月30日、防衛省は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のレーダーに、米ロッキード・マーチンの「SSR」を選定したと発表した。写真は同社のロゴ。2016年10月に東京で撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

防衛省は30日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のレーダーに、米ロッキード・マーチンの「SSR」を選定したと発表した。土地の造成費や30年間の維持費、ミサイルの取得費なども含めると、イージス・アショアの運用経費は総額で5000億円を超える見通し。配備時期は当初予定の2023年度から遅れる可能性がある。

イージス・アショアは、イージス艦に積んでいる迎撃ミサイルシステムを陸上に配備したもの。現行のイージス艦よりも新しいレーダーの搭載を決めたことで、本体の取得費は2基2680億円と、防衛省が当初説明していた1600億円から6割以上膨らむこととなった。

小野寺五典防衛相は記者団に、北朝鮮が過去に発射した高い軌道の弾道ミサイルや、複数のミサイルを同時に発射する飽和攻撃にも対処できるようになると説明。「最新鋭のレーダーを搭載することで、わが国の弾道ミサイル防衛の能力は飛躍的に向上する」と語った。

30年間運用した際の維持費と教育訓練費も加えると、4664億円になる見込み。これ以外に土地の整備費、機器を収納する建物の建設費、ミサイル発射機の取得費、光熱費がかかる。搭載するミサイルも別途調達する必要がある。

防衛省は来年度予算の概算要求に本体の取得費を計上し、米政府とロッキードと契約を交わす。1基目の配備は2025年度になる見通しだが、小野寺氏は「より早期に配備できないか、米政府などと検討していきたい」と述べた。

北朝鮮の弾道ミサイル発射が常態化したことを受け、日本政府は昨年末にイージス・アショア2基の導入を決定した。探知性能を左右するレーダーには複数の選択肢があり、防衛省は米海軍がイージス艦への採用を決めた米レイセオン(RTN.N)の「スパイ6」と、米ミサイル防衛庁がアラスカ州に配備するレーダーをもとにしたロッキードのSSRを候補に選定を進めてきた。

両社の提案とも配備時期は同じだったが、防衛省はSSRのほうが探知性能、費用とも優位だったとしている。

防衛省は秋田県と山口県にイージス・アショアを1基ずつ配備して日本全国を防御したい考えだが、地元は反発を強めている。

(久保信博)

[東京 30日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中