最新記事

日朝首脳会談

出遅れた日本政府、北朝鮮と首脳会談を模索 拉致問題で経済支援は不透明

2018年6月14日(木)14時27分

6月14日、日本政府は、米朝首脳会談の開催と北朝鮮の非核化へのコミットメントを踏まえ、日朝首脳会談開催を模索し始めた。写真は会談後に散歩する米トランプ大統領(左)と北朝鮮の金委員長(右)。12日にシンガポールで撮影。KCNA提供(2018年 ロイター)

日本政府は、米朝首脳会談の開催と北朝鮮の非核化へのコミットメントを踏まえ、日朝首脳会談開催を模索し始めた。複数の関係筋が明らかにした。同時に北朝鮮に対する経済支援の可能性を探る動きも見せ始めたが、現時点で核・ミサイル・拉致問題の進展がどうなるのか不透明で手探りの状況を脱していない。

関係筋によると、外務省関係者は14日からモンゴル・ウランバートルで開かれる国際会議に合わせ、北朝鮮側当局者との接触を図る予定だ。もっとも現時点では、北朝鮮側と接触できる確約が取れているわけではないという。

また、早期の日朝首脳会談の開催を目指すべきとの意見も、政府内で出ている。9月中旬にロシア・ウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」への参加の合間に、日朝首脳が会談することも選択肢の一つとして浮上しているが、9月は自民党総裁選も予定され、2つの日程をどのように調整するのかなどは未定という。

もっとも政府・与党関係者の間では「拙速」な首脳会談の実現に慎重論もある。北朝鮮の非核化に向けたプロセスは具体案がみえてない上、拉致被害者の帰還など明確な成果が期待できるのを待つべきとの意見もある。

政府内でハードルが低いとみられいているのが、ミサイル除去への支援。特に中距離弾道ミサイルについては、仮想敵国は日本のみとされており「除去を日本が支援するのに理解が得られやすい」(政府関係者)ためだ。

トランプ大統領は12日の米朝会談後の記者会見で、非核化の必要経費などさまざまな費用を日韓が支払うと受け取れる表現で発言した。

政府・与党内では、非核化は国際社会と連携して実現するとの立場から、非核化コストの負担に前向きな声がある一方、現時点で検証可能な非核化の実現には不透明要素が多く、今後の米朝交渉の行方を見守るべきだとの慎重論もある。

一方、最もハードルが高いとみられているのが経済支援。これまで安倍晋三政権は、核・ミサイル・拉致問題の解決が、経済支援を開始する必要条件としてきた。

政府・与党内の一部には、米朝間で非核化に向けた工程表が作成されれば、中期的な経済支援策を議論できるとの意見も浮上してきた。

ただ、核とミサイルだけでなく、日本政府にとって最重要である拉致問題で北朝鮮がどのような対応を示すのか、現時点では確定的なことはまったく分からないという。

そうした状況の下で、具体的な経済支援の中身を議論することは「世論の動向も意識すると難しい」(与党関係者)との声が多く、経済支援の検討は相当先になるとの観測も出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中