最新記事

貿易戦争

米中貿易摩擦がベンツ、BMWを直撃 全世界巻き込む貿易戦争の可能性も

2018年6月22日(金)13時28分

6月21日、米中貿易摩擦の激化は、高関税の標的となった米農業生産者や中国の太陽光パネル、鉄鋼などの製造業者だけでなく、米国に生産拠点を持つドイツの自動車大手も直撃、世界的な貿易戦争に発展する様相を示している。写真は20日、ミネソタ州での貿易討論会に参加するトランプ米大統領(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

米中貿易摩擦の激化は、高関税の標的となった米農業生産者や中国の太陽光パネル、鉄鋼などの製造業者だけでなく、米国に生産拠点を持つドイツの自動車大手も直撃、世界的な貿易戦争に発展する様相を示している。

独自動車大手ダイムラーは20日、2018年の業績見通しを下方修正し、BMWは米中貿易摩擦を踏まえて「戦略的選択肢」を検討していると明らかにした。ダイムラーは米アラバマ州の工場でメルセデス・ベンツ車を生産し、中国を含めた世界各地に輸出しており、BMWの米サウスカロライナ州の工場は米国内の工場としては輸出台数が最も多い。

エコノミストの多くは米中間の高関税の報復について、世界経済の成長を阻害する事態にはならないと見込んでいるが、農業、自動車、ハイテクなど個別の業界は悪影響を免れないとみられる。

トランプ米大統領は知的財産権侵害を巡り、総額500億ドルの中国製品に対する輸入関税を計画しており、7月6日に予定通り第1弾を発動するかどうかが注目されている。大統領は中国の報復関税に対抗して追加関税を課す意向も示しており、これまでに総額4500億ドル規模の中国製品に対して関税適用を警告、中国の対米輸出額5000億ドルの大部分がターゲットになった。

米中双方がこれまで警告した通りに関税を導入すれば、全世界が巻き込まれ、1930年代以来の大規模な貿易戦争に発展する公算は大きい。

中国商務省の高峰報道官は21日、「米国が気まぐれに振る舞い、緊張を高め、貿易戦争を引き起こしたことは非常に遺憾」と非難。「米国は『強硬措置』を掲げて交渉に臨むのが常とう手段のようだが、中国には通用しない」と強調した。

一方、中国の習近平国家主席はこの日、北京で海外企業の幹部らと会合を開き、4月に約束した関税削減方針を推進すると言明した。「私は約束を実行してきた」と語った。

ただ、米中間の非難の応酬はエスカレートするばかりだ。ロス米商務長官はCNBCに対し「関税、非関税双方を含む大規模な障壁を設ける貿易相手国が一段と苦痛を味わう環境を整える必要がある」とし、「障壁を撤廃するよりも維持するほうが難しくなるようにすることが必要だ」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の石油市場、26年は大幅な供給過剰に IEA予

ワールド

米中間選挙、民主党員の方が投票に意欲的=ロイター/

ビジネス

ユーロ圏9月の鉱工業生産、予想下回る伸び 独伊は堅

ビジネス

ECB、地政学リスク過小評価に警鐘 銀行規制緩和に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中