最新記事

北朝鮮情勢

中国、「米朝韓」3者終戦宣言は無効!

2018年6月7日(木)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

訪米してトランプ大統領と会談した韓国の文在寅大統領(5月22日) Carlos Barria-REUTERS

米朝首脳会談で主要議題になると見込まれる朝鮮戦争の終戦宣言に関して、文在寅大統領は3者宣言に前のめりだ。それに対して中国は「無効!」とまで表現して抗議を表明している。制裁維持とも矛盾すると語る老幹部も。

朝鮮戦争の終戦宣言が主要議題に?

トランプ大統領が北朝鮮の非核化プロセスに関して、北朝鮮が主張する「段階的非核化」を事実上容認した形となったことから、6月12日の米朝首脳会談においては、付随的とみなされていた朝鮮戦争の終戦宣言の方にウェイトが置かれるようになった感がある。

トランプ大統領としても中間選挙など米国内の政治日程のために何かしらのインパクトのある功績を残さなければならないだろう。しかし、会談の前提条件として、当初、あそこまで力説していた「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID:Complete, Verifiable, Irreversible, Dismantlement)」を「ゆっくりでいい」と言ってしまったのだから、勢い終戦宣言にシフトしてしまうのも無理からぬことだろう。

「さあ、俺は北朝鮮の非核化を一瞬で止めて見せた男だぞ!」から「俺は、あの朝鮮戦争の終戦を宣言し、冷戦最後の遺物を解決した男だぞ!」に焦点をずらして功績をアピールするしかないところに追い込まれている側面は否めない。

そこへ、何が何でもとばかりに、自己の存在を全面に出してきたのが韓国の文在寅大統領だ。

文在寅大統領、シンガポールで「米朝韓」3者で終戦宣言と

文在寅大統領は金正恩委員長との2回目の南北首脳会談の結果を発表した5月27日、「米朝会談が成功すれば南北米3者首脳会談を通し、終戦宣言を推進したい」と述べた。つまり6月12日のシンガポールにおける米朝首脳会談に自分も何らかの形で参加して、「米朝韓」3者によって終戦宣言をしたいとの意欲を強く示したのである。

6月5日付の「ハンギョレ新聞(the hankyoreh)」によれば、終戦宣言に「不可侵の確約」を入れて「金正恩委員長を安心させたい」という趣旨の文在寅大統領の提案が書いてある。<文大統領、終戦宣言に「不可侵」盛り込む案を推進>をご覧いただきたい。

それによれば、北が心配しているのは「核を放棄した後の体制の保証」で、朝鮮戦争の終戦を宣言してしまえば、核放棄後にアメリカから軍事攻撃を受ける心配はなくなるし、また「不可侵の確約」をすれば、アメリカだけでなく韓国からの軍事的脅威も完全に消えるだろうという考え方のようだ。こうしてこそ初めて、北は安心して核を放棄できるだろうというのが提案の理由だとのこと。

たしかに一理ある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中