最新記事

映画

「反共」から「統一」まで 韓国とハリウッドが描いた北朝鮮とは?

2018年5月27日(日)20時30分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

また、同じく2013年に日本公開された「レッド・ドーン」は、北朝鮮がアメリカを占領するという設定だ。ある日、空からたくさんのパラシュート部隊が下りてきてそのまま全米を占拠し始め、山中に逃げ込んだ主人公は友人数人と戦う。実はこの映画、1984年公開の「若き勇者たち」という映画のリメイク。オリジナル版のストーリーでは敵国はソ連、キューバ、ニカラグアの共産圏連合軍という設定だった。それを2009年のクランクイン当時、中国の人民解放軍が占拠するというシナリオに書き換えたものの、これが中国側からのクレームで2011年に北朝鮮に変更されることとなった。撮影はすでに終了していたため100万ドルの追加予算をつぎ込み、作品中のシンボルマークや国旗を書き換えたそうだ。

このような修正は、2011年に発売されたシューティングゲーム「ホームフロント」でも行われた。「地獄の黙示録」の脚本家がゲームシナリオを担当したのだが、こちらも当初は中国がアメリカを占拠した展開だった。しかし、途中から北朝鮮を主な敵として制作される事となった。


「ザ・インタビュー」 Movieclips Trailers / YouTube

2014年には問題作「ザ・インタビュー」が公開された。各国で公開中止や日本でも公開はされずともニュースや特集が組まれたこともあり題名は聞いたことがあるかもしれない。あるトーク番組の司会者とプロデューサーが、金正恩委員長にインタビューを行うことになる。CIAはこれを機会に金正恩の暗殺を企てるが、司会者は金正恩とすっかり友達に。プロデューサーも北朝鮮のお付きの女性士官と恋仲になるのだが、最終的にはインタビュー中継を行って金正恩の暗殺も見事成功。北朝鮮は民主主義化していく──という内容だ。内容もさることながら、ジャンルとしてもドタバタコメディーということからちょっとアブナイ笑い満載の映画だ。

「反共主義」という言葉はすっかり過去のもの──と思いがちだが、こうしてみるとその精神は残っているようだ。世界の工場となった中国を題材にすることが半ばタブーとなった現在、北朝鮮は"得体の知れぬ共産主義国家"として、ハリウッドにいまだ残された「反共主義」精神のはけ口なのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中