最新記事

韓国事情

「孤独のグルメ」が広がる韓国〜変わる韓国の日本食ブーム

2018年5月18日(金)17時00分
佐々木和義

2011年、東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故が起きると、韓国政府は日本酒を含む日本からの輸入食品に制限を設けた。日本の食品は放射能に汚染されているという風評が広がり、ブームは終焉に向かうことになる。

2013年に接待や贈り物の額を厳しく制限する「不正請託禁止及び公職者の利害衝突防止法」(通称、金英蘭法)が国会に提出され追い打ちとなる。高級日本料理店や居酒屋は経営が立ち行かなくなり、撤退や閉店が相次いだ。

3度目のブーム

高級日本料理やIZAKAYAに変わって、日本のファストフードや大衆食を提供する店がブームとなる。2011年5月に一風堂1号店がオープン、翌2012年にはトリドールが丸亀製麺の展開をはじめ、CoCo壱番屋、モスバーガー、かつや、日本式丼物を提供する弘大どんぶりなどのチェーン店に加えて、個人が経営する日本式ラーメン店やベーカリーも増えてきた。

そして、ドラマ「深夜食堂」の放映がはじまり、小規模な居酒屋が広がった。IZAKAYAブームやSAKEブームは江南や弘大などの繁華街が中心だったが、「深夜食堂」を模した小規模な居酒屋を住宅地でも目にするようになる。

「孤独なグルメ」が人気を得た背景

韓国の飲食店は4人掛けや8人掛けのテーブルを備え、グループを想定したメニューが多い。昼食や夕食の食事時は2人以下の利用客を断る店もある。1人で食事を摂る「一飯族」を一緒に食事をする友人や同僚がいないさびしい人と見る風潮があったが、首都圏を中心に1人世帯や2人世帯が増加しはじめると一人飯に対応する飲食店も現れた。

1人で食事を楽しむ「孤独のグルメ」の放映はそういった韓国社会の変化と重なった。華やかなインテリアや雑誌で取り上げられるようなレストランではなく、普通の町にある平凡な店が舞台で、どこにでもいそうな個人事業者が一人飯を楽しむドラマが共感を呼んだのである。

飲食店と利用者のニーズの合致もブームを支える要因となっている。韓国と日本は共通の食材が多い。韓国料理と日本料理は原価やコストはあまり変わらないが、日本食は客単価が高く飲食店の利幅が大きい。2015年から急増した訪日韓国人の65.2%が日本食を楽しみにしているという調査結果があり、本格的な日本の味を求める消費者が増えているのだ。

孤独のグルメ Season7 #7

JTBC News

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中