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人種問題で注目のロイヤルウェディング 英国黒人社会はどう見ている?

2018年5月16日(水)18時00分

5月8日、弁護士のゲイル・ウォルターズさんは、普段はほとんど英王室のことを気にかけないが、それでも米国人女優メーガン・マークルさんとエリザベス女王の孫であるヘンリー王子の結婚は、英国の黒人社会において重要な瞬間になると感じている。写真は1月、ロンドン南部ブリクストンを訪問するマークルさんとヘンリー王子(2018年 ロイター)

弁護士のゲイル・ウォルターズさんは、普段はほとんど英王室のことを気にかけないが、それでも米国人女優メーガン・マークルさんとエリザベス女王の孫であるヘンリー王子の結婚は、英国の黒人社会において重要な瞬間になると感じている。

「重要なのは当たり前。黒人が結婚して英王室に入るという事自体、これまでなかった広がりと多様性と包摂を意味すると思う」と、ロンドン南部ブリクストンで買い物をしていたウォルターズさんは話した。

「私は生まれで支配が決まるとは思わないので、やはり王室は支持しない。それでも今回の結婚の象徴的意味合いは理解できるし、とても影響力がある」

英王位継承順位6位のヘンリー王子と、白人の父親とアフリカ系米国人の母親との間に生まれたマークルさんの結婚は、英国がいかに平等主義的で、人種の共存が進んだ社会になったかを示すものとして歓迎されている。

わずか60年前、離婚経験者との結婚は英王室で容認されるものではなかった。また、カトリック教徒と結婚しても王位継承権を失わずに済むようになったのは、つい2013年のことだ。

したがって、英国人の心理に大きなシンボル的影響力を持ち、白人しかいなかった王室にマークルさんが入ることの意味は、過小評価されるべきではないと、英国の人種やアイデンティティーなどに関する著書があるアフア・ハーシュ氏は言う。

「英国で育つ若い世代が受け取るメッセージに大きな変化が生じる。黒人らしさと英国らしさは水と油だという考え方にとっても(大きな変化)だ」と、ハーシュ氏は話し、こう付け加えた。

「もし私がもっと若かったなら、これが自分の国だと感じる正当性と自信という面で、心理的にも大きな影響を受けていただろう」

血の川

ヘンリー王子とマークルさんの結婚式は、英国で人種問題が注目を集める中で行われる。

先月は、黒人ティーンエージャーのスティーブン・ローレンスさんが白人の人種差別主義者に殺され、ロンドン警察当局の捜査の不備が「組織的人種差別」と調査で指摘された事件から、25年の節目だった。

また、保守党のイノック・パウエル議員が、いわゆる「血の川」演説で「黒人が白人に対してムチを握るようになる」と述べて移民排斥を訴えてからちょうど50年にあたる。

英政府はまた、第2次世界大戦後にカリブ海地域の英領(当時)から英国に招かれ移住したものの、その後必要な公的書類や基本的人権を得られずにいた「ウィンドラッシュ世代」と呼ばれる移民の子孫の扱いを巡るスキャンダルに揺れているところだ。

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