最新記事

保護主義

トランプ政権、NAFTA自動車部品調達比率を75%要請 4年間で段階的引き上げ

2018年5月1日(火)08時25分

4月30日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡り、米国が自動車部品の域内調達比率を現在の62.5%から最大4年かけて段階的に75%に引き上げることを提案していることが分かった。 2017年10月撮影(2018年 ロイター/Ann Saphir)

北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡り、米国が自動車部品の域内調達比率を現在の62.5%から最大4年かけて段階的に75%に引き上げることを提案していることが分かった。

ロイターが入手した米政府の提案の要綱で明らかになった。同要綱は現在、自動車業界幹部の間で回覧されている。

具体的には、乗用車および小型車(LDV)の比率を段階的に4年かけて引き上げ、政府が重要視するピックアップトラックについては2年で引き上げる。米通商代表部(USTR)はこれまで自動車部品の域内調達比率の85%への引き上げを主張していた。

米国は今回、エンジンや動力伝達装置(ドライブトレイン)など一部の高価値部品も域内調達比率75%の対象とした。

自動車の生産や生産能力の配分、部品調達の計画を何年も前から決めている自動車メーカーにとって、2年や4年という調達比率引き上げの期間は短い。ただ、提案の要綱によると、メーカーが新たな調達比率基準を満たすための「適切な取り組み」を示す場合、期限の2年延長を認められる可能性があるという。

提案ではこのほか、製造作業について、乗用車および小型車は価格の40%に当たる作業に時給16ドルの賃金を支払うことを要請。ピックアップトラックについては45%とした。

賃金については、ライトハイザーUSTR代表が先週の再交渉会合で、米国とカナダの自動車生産保護に向けてメキシコの賃金水準に上昇圧力を掛けることを目標に提案していた。

メキシコ自動車工業会(AMIA)のエドワード・ソリス会長は30日、自動車を巡る米国の提案は受け入れ難く実行可能でないとの認識を示した。

メキシコだけでなく、米国の業界団体も提案に冷ややかな反応を示していることから、NAFTA再交渉の基本合意に向けた山場とされる自動車分野での合意は近くないとみられる。

米デトロイトや海外ブランドの自動車メーカーを代表する業界団体「オート・アライアンス」は、米国の提案について、低コストの海外ではなく北米での自動車と部品の生産を維持するための「微妙なバランス」が取れた内容ではない可能性を指摘し、懸念を示した。

米国が乗用車に課す輸入関税はわずか2.5%に過ぎないため、コストが上昇すると利益率はさらに少なくなり、NAFTAの恩恵が相殺されかねない。ピックアップトラックに課す関税は25%。

[ワシントン 30日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中