最新記事

日本経済

中国のIoT化戦略で日本の輸出が再加速 半導体製造装置が好調

2018年5月21日(月)17時23分

5月21日、今年1─3月期に伸び悩みの兆しが見えた日本の輸出は、対米自動車輸出や中国向け半導体製造装置の輸出が好調で、再加速している。米トランプ政権の輸入規制の影響も今のところなく、日本経済は輸出主導の拡大が継続する可能性が高まっている。写真は都内で2016年3月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

今年1─3月期に伸び悩みの兆しが見えた日本の輸出は、対米自動車輸出や中国向け半導体製造装置の輸出が好調で、再加速している。米トランプ政権の輸入規制の影響も今のところなく、日本経済は輸出主導の拡大が継続する可能性が高まっている。

対中半導体製造装置の輸出増の背景には、スマートフォン需要だけでなく、中国自身が推し進めているIT化戦略の影響も色濃く出ており、貿易構造の変化もうかがえる。

<中国のIoT化、日本で需要創出>

4月の実質輸出(日銀発表)は、前月比5.2%伸びた。1年2カ月ぶりの上昇率を記録した背景には、中国向け半導体製造装置の好調さがある。金額ベースでは前年比18%増。

その要因として挙がっているのが、中国が進めるIT化。データセンターやIoT(モノのインターネット)用センサー需要などが急速に伸びている。

今年1─3月期も、日本の中国向け半導体製造装置の輸出は前年同期比3割を超える増加となっていたが、4月は2倍超へと勢いが加速した。

自動車輸出も好調を維持し、4月は米国、欧州向けの好調を背景に前年比15.3%増となった。はん用・生産用・業務用機器、電気機器といった加工組立品も伸びた。

SMBC日興証券のシニアエコノミスト、宮前耕也氏は、4月貿易統計で「世界経済拡大の恩恵を受けて、輸出が増加基調を維持していることが確認された」とみている。

1─3月期国内総生産(GDP)では、輸出が前期比0.6%増と17年10─12月期の2.2%増に比べて勢いが鈍化したが、「やはりソフトパッチにすぎなかったようだ。4─6月期は、輸出が日本経済をけん引する構図になろう」と述べている。

<世界の貿易指数低下、貿易摩擦の懸念反映か>

1─3月期のドル/円は、110円超の円安水準から104円台まで円高が進む場面もあったが、足元では111円台に戻している。

日銀の調べでは、この2年間をみると、日本の実質輸出が為替に影響される度合は極めて低くなっているが、自動車産業などでは輸出における円安の影響は明確にプラス。

このまま推移すれば、世界経済の拡大と為替差益で自動車業界の収益見通しは上振れする可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、26年度の難民受け入れ上限7500人に

ワールド

米NY州が非常事態宣言、6500万ドルのフードバン

ワールド

ロシア、ウクライナのエネルギー施設に集中攻撃 全国

ビジネス

ECB、3会合連続で金利据え置き 今後の道筋示さず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中