最新記事

中国

中国「市場開放拡大は中米貿易摩擦と無関係!」

2018年4月17日(火)12時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ボアオ・アジア・フォーラム 2018年次総会で演説する習近平国家主席 Joseph Campbell-REUTERS

習近平が博鰲(ボアオ)アジアフォーラム2018年次総会で市場開放をさらに拡大すると表明したのは米中貿易摩擦とは無関係だと中国外交部は激しく抗議。事実、そのような解釈は習近平政権の戦略を誤読させ、日本にとっても適切ではない。

博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで習近平「市場の大門を大きく開く!」

習近平国家主席は4月10日に海南省で開催された博鰲アジアフォーラム2018年次総会の開幕式で「中国は絶対に開放の大門を閉ざすことはない。ひたすら、門をますます大きく開くということあるのみだ!」と声を張り上げ、以下の施策を宣言した。

●大幅に市場参入条件(環境)を緩和させる。

●さらに吸引力のある投資環境を創り出す。

●知的財産権を強力に保護する。

●輸入を主導的に拡大する。

これに対してトランプ大統領は「感謝する」旨ツイートし、あたかも中国がアメリカの貿易摩擦を避けるために譲歩したかのような印象を与えようとした。

日本のメディアでも、トランプ流に習近平の宣言を解釈し、「中国の譲歩により米中貿易戦争が回避されそうだ」というトーンの情報が飛び交った。

激怒した中国

すると中国外交部は、この解釈を激しく非難する声明を、つぎつぎと出していった。

4月11日の中国共産党系の環境網は、まず外交部のスポークスマン、耿爽(こうそう)氏が定例記者会見で「米中貿易衝突とは無関係だ」と言ったことを激しいタイトルで発表している。

すなわち「中国の開放拡大施策は中米貿易衝突と関係しているのだろうか? 外交部:無関係だ!」という大見出しだ。以下に記者と耿爽との問答の概要を記す。

質問:昨日習近平出席は博鰲アジアフォーラム2018の開幕式で中国はさらに一歩、開放を推し進めるという施策を発表しましたが、これは(中略)アメリカとの貿易衝突と関係ありますか?

回答:あなたに言っておきますが、これは米中貿易衝突とはいかなる関係もありません。中国政府の運営の基礎を知っている者であるならば、このような重大な施策を、こんな短期間に決定できるはずがないことはすぐに分ること。長年にわたる論議と検討、深慮遠謀がなければ絶対に実行できない。中国が対外開放を堅持するということは一貫した国策であることを皆さんは肝に銘じておくべきだ。そもそも(昨年10月の)第19回党大会においても、過去5年間の党の活動報告の重要な部分として(習近平が)述べている。改革開放のさらなく隔代は中国自身のニーズから計画され、自国のタイムテーブルに従い、自主的に描いてきた路線図だ。

中国が開放を拡大していくことに関して、中国はいかなる国の干渉も受けない!

いかなる国も干渉できない!

以上が耿爽の回答の概要だが、彼に続いて外交部の華春瑩(か・しゅんえい)報道官もさらに長く強烈な抗議を表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

G7声明、日本の主張も踏まえ為替のコミット再確認=

ビジネス

訂正(発表者側の申し出・17日配信の記事)-トヨタ

ビジネス

UBS、新たな人員削減計画 クレディ・スイス統合で

ビジネス

G7財務相、イラン制裁やロシア凍結資産の活用で協力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 5

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 6

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃…

  • 10

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中