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「北極シルクロード」争奪戦は中ロが先行中

2018年4月23日(月)12時05分
キース・ジョンソン、リード・スタンディッシュ

現在は巨額の投資と止まらない温暖化のおかげで北極海航路は再開したものの、今すぐ既存の航路に対抗できるわけではない。氷がなくなれば航行可能期間が長くなり、航行距離も南回りルートよりはるかに短いが、問題はコスト。商業化には数十年はかかりそうだ。

「北極海航路はロシアにとっては重要になるだろうが、それ以外の国にとっては重要にはなり得ない」と、トゥルク大学(フィンランド)のツォーマス・キイスキーは言う。

狙いはエネルギー資源

航行距離は短くても、氷の多い海域を航行するには速度を落とさざるを得ない。また船体に一定の耐氷性能が必要なケースが大半で、どちらもコスト増につながる。ロシア沿岸の浅い海域は国際海運の主力の大型コンテナ船は通れない。地中海や東南アジアなど、貨物大手のグローバルネットワークのハブ市場とも直結していない。

そうした現実は実際の貨物量に表れている。北極海航路を利用した貨物輸送量は昨年、過去最多の970万トンに達したが、そのうち航路全域を航行したのはわずか19万4364トン。残りはロシアの国内輸送(大型エネルギープロジェクトの建設機材が多い)か、ヤマル半島の液化天然ガス(LNG)の対アジア輸出などに限られていた。

それでもロシア極北の石油・ガス資源を市場に運ぶという点で、北極海航路は重要だ。ロシアのガス生産企業ノバテクは砕氷LNG輸送船15隻を発注。その第1号が昨年8月に北極海航路を航行、第2号は冬に砕氷船の先導なしで韓国からロシア北方経由でフランスまで航行した。

ロシアは北極のエネルギー資源を開発したがっている。14年のクリミア併合を受けて欧米が科した制裁も一因だ。制裁によってロシアは従来の油田・ガス田の生産性を維持するのに必要な新技術へのアクセスを制限されていると、米シンクタンク、戦略国際問題研究所のヘザー・コンリー上級副所長は指摘する。

アメリカのいない隙に

ヤマルLNGプロジェクトが軌道に乗った今、ロシアは国際LNG市場でのシェア拡大を狙っている。LNG市場にはアメリカが大規模参入したばかりだが、ヤマル半島のLNGは低コストで、そうしたライバルより安く売れる。北極海航路のおかげで、プロジェクトがフル稼働する20年には、世界のLNG市場におけるロシアのシェアは倍増する見込みだ。

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