最新記事

キャッシュレス

イギリスは10年以内に完全なキャッシュレス社会? 急速に電子化する欧州

2018年4月19日(木)19時20分
松丸さとみ

イギリスは10年以内に完全なキャッシュレス社会? andresr-iStock.

<カードや携帯などでの非接触型決済が急速に進むヨーロッパ。スウェーデンでは、人口の約36%が、現金を全く使っていない>

英国、現金が最多の決済手段でなくなる見通し

英紙イブニング・スタンダード(ES)は4月12日付の記事で、英国が10年以内に完全なキャッシュレス社会になるとの予測を掲載した。この予測をしているのは、フィンテックの新興企業、レボリュートの共同創設者、ヴラド・ヤツェンコ氏だ。

英国では、カードや携帯などでの非接触型決済が都市部を中心に急速に進んでおり、現金を全く受け付けないカフェも出てきている。2年前の2016年、ロンドン市民2000人を対象に行われた調査では、回答者の4分の3近くが、ロンドンが完全にキャッシュレスになるのは2036年と予測していた。この2年で、キャッシュレス化の勢いが強まったことがうかがえる。

英紙ガーディアンは今年2月、英国における決済方法として現在最も多いのは現金だが、年内にはデビッドカードがこれを上回る見通しだと報じていた。

英国金融機関の事業団体UKファイナンスが発表した数値によると、現金取引が全決済に占める割合は、2006年は62%だったが、2016年には40%に減少。2026年には21%まで低下すると予測されている。

レボリュートのヤツェンコ氏はES紙に対し、英国では金融機関を中心に、各企業がキャッシュレス社会への対応を進めていると述べた。しかしインフラがまだ追いついていないこと、そして英国人が現金に対して愛着を持っていることなどが、完全なキャッシュレス化の障害になっていると指摘している。

キャッシュレスに抵抗する人も

ES紙によると、ヨーロッパで最もキャッシュレスが進んでいる国はスウェーデンだ。人口の約36%が、現金を全く使っていない(英国は約17%)。スウェーデンの通貨「クローナ」は現在、市場での流通量が1990年以来で最少を記録しているという。

首都ストックホルムでは、市内を走る路線バスも現金を受け付けておらず、カフェや小売店も、カードやスマートフォンでしか決済できない店が少なくない。

BBCはスウェーデンの中央銀行からの数値として、小売業界での現金取引は、2010年の約40%から現在は15%に減少したと伝えている。

しかしそのスウェーデンでも、キャッシュレス化の波に抵抗している人たちがいる。BBCによると、スウェーデンの調査機関シフォが4月に発表した世論調査で、スウェーデン人10人中7人が、現金で支払う選択肢が将来にも残ってほしいと考えていることが分かった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中