最新記事

配車サービス

中国の滴滴、宿敵ウーバー独占市場へ参入 剛腕手法は受け入れられるか

2018年3月27日(火)18時22分

3月19日、中国の配車サービス大手、滴滴出行(ディディ・チューシン)は、メキシコで宿敵ウーバーの急所を攻める準備を整えている。写真は2月、メキシコシティで車窓から見えるウーバーのロゴ(2018年 ロイタ―/Carlos Jasso)

メキシコシティーの先端的な地区にあるシェアオフィスの一角で、中国の配車サービス大手、滴滴出行(ディディ・チューシン)は、ひっそりと業務を進めつつ、宿敵ウーバーの急所を攻める準備を整えている。

メキシコはウーバー・テクノロジーズにとって最も重要で収益性の高い市場の1つだ。米サンフランシスコに本拠を置くウーバーはメキシコでほぼ独占状態を享受しており、40前後の都市で700万人のユーザーを抱えている。だからこそ滴滴出行は、この快適な状況からライバルを追い出したいと切望している。

ウーバーに勝つにはどうすればいいのか──。滴滴出行は露骨な戦略に訴えている。メキシコ事業チームのためにウーバーの従業員を引き抜いているのだ。

滴滴出行の戦略に詳しい関係者によれば、従業員が素姓を隠してウーバーのサービスを利用し、運転手と交わす車中での会話から弱点を突き止めようとしているという。同関係者によれば、滴滴出行はウーバーより大きな構想を持っており、メキシコで自転車、スクーター、オートバイのシェアリング事業を展開したいと計画しているという。

米アップルや日本のソフトバンク<9984.T>を含む世界の優良企業からの投資によって、滴滴出行は潤沢な資金を誇る。過去1年間に限っても、グローバルな事業拡大を支える資金として100億ドル(約1兆円)近くを集めている。

「滴滴出行と戦いたいとは思わない」と、北京で活動する投資家でアドバイザーのジェフリー・タウソン氏は語る。「彼らは負けない」

だが、滴滴出行がメキシコで宿敵に勝てるかどうかについては、確実とは言えない。アジア以外の地域で事業をゼロから立ち上げるのは初めての試みだ。コストのかかる企てとなる。

はっきりしているのは、滴滴出行が株式時価総額560億ドルというバリュエ―ションを正当化するために成長を続ける圧力にさらされているということだ。ラテンアメリカは以前からのライバルとの新たな戦場であり、滴滴出行にとっては敵地でのアウェイ戦だ。

IHSマークイットのアナリスト、ジェレミー・カールソン氏は「太平洋を越えるとなれば、話はまったく変わってくる」と話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中