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トランプに「ノー」と言えない安倍首相 森友問題の火消しに外交は有効か?

2018年3月27日(火)09時29分
ダニエル・スナイダー(スタンフォード大学教授)※東洋経済オンラインより転載

現時点では、「安倍首相は今まさに、TPP(環太平洋経済連携協定)を成功させ、国防を強化し、日本を『トランプの波』の上に乗った状態を保つため、あらゆる策を講じているように見える」とサミュエルズ氏は話している。

これらの進展の中で最も重要なのは、もちろん、朝鮮半島の状況である。金正恩委員長と会談する決定をしたことを、トランプ大統領が何の気もなく発表したことが安倍首相と日本の外務省にショックを与えたことは明らかだ。とはいえ、完全な「青天の霹靂(へきれき)」ということではなかったようだ。

日本が懸念する「柔和な戦略」

筆者は昨年9月以来、日本に滞在している。その間、外務省の高官から何度も、トランプ大統領が大陸間弾道ミサイル (ICBM)計画を中止することで北朝鮮と合意に達する、という形で待望の勝利を収めるチャンスを得るのではないかという懸念を聞いていた。

トランプ大統領にとっては、米本土への脅威を終結させたというアピールになる。だが、日本(と韓国)にとっては、これは日本の防衛から米国が実質的に撤退するということを意味する。安倍首相と親しいある情報源によれば、「安倍首相は日本が孤立することを懸念している」。

この情報源によると、トランプ大統領が「柔和な戦略を取る」という懸念は、狡猾な韓国政府と関連があると安倍首相は見ている。「文大統領の意向をトランプ大統領が聞き入れることを安倍首相は恐れている」(同氏)。この不安は、平昌オリンピックの和平会談後に増しており、文大統領の特使からのメッセージを北朝鮮があまりにも純朴に受け入れたことからも想像できる。

安倍首相が4月にワシントンに駆け込む決断をしたのは、韓国が対話を強く求めていることに対抗する意図をもってのことだ。「安倍首相は引き続きトランプ大統領の背筋を正させ、金正恩委員長と突然強い抱擁を交わすことがないようにするのが自分の役割だと考えている」、と前述の情報筋は話す。

国家安全保障問題担当大統領補佐官のH.R.マクマスターを辞任させ、新たに保守の論客であり、ブッシュ政権時に高官を務めたジョン・ボルトン氏をこのポストに充てるという決断は、大統領行政府や国務省の一部から歓迎された。

ボルトン氏は、北朝鮮とのあらゆる形態の交渉に非常に懐疑的な立場の強硬派として知られており、もちろん凍結の交渉も例外ではない。彼はおそらく、新たに国務長官に就任したマイク・ポンペオ氏と共に日本が懸念する「柔和な政策」の類を米国側から監視する役割を担うことになるだろう。

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