最新記事

日本政治

トランプに「ノー」と言えない安倍首相 森友問題の火消しに外交は有効か?

2018年3月27日(火)09時29分
ダニエル・スナイダー(スタンフォード大学教授)※東洋経済オンラインより転載

安倍首相は、国内では、外交や安全保障の問題を利用して、日本人の関心を安倍首相自身の問題からそらすことに成功してきた。前回の衆議院の解散総選挙の際もそうだった。国内で複数の問題が浮上する中、北朝鮮の脅威を日本が直面する最大の課題であると主張して対抗したのだ。

「狂気」とも言える過密な外遊スケジュール

再び問題が噴出したことを受け、安倍首相は過密な外遊スケジュールを決定した。これは政治的苦境から注目をそらすため、なんらかの外交戦略の成果を得るためのほとんど狂気とも言えるようなものだ。今後数週間の予定は以下のとおりである。

  • *4月下旬に行われる南北朝鮮首脳会談に先立ち、4月中旬、ワシントンを訪問し、北朝鮮に関する確固たるパイプのさらなる強化を目指す。
  • *5月下旬、開催が遅れていた日中韓首脳会議を日本で開催する可能性がある。それに先立ち、訪韓して文在寅大統領との二国間協議を行う可能性も。
  • *5月中旬、ロシアを訪れ、ウラジーミル・プーチン大統領との間で千島列島の領土問題に関して画期的な進展を再度模索する。
  • *5月下旬、トランプ大統領と金正恩労働党委員長の首脳会談が開催された場合、安倍首相が拉致問題の最終的な解決を求めて金委員長と首脳会談を開催するための働きかけを強める可能性がある。


日本研究で名を挙げている政治学者のリチャード・サミュエルズ、マサチューセッツ工科大学 (MIT) 国際学センター長は、「(こうした取り組みは)総合すると日本人の問題意識をすり替えるための必死の試みに見える」と話す。

しかし、セルゲイ・ラブロフ外相の元を先週訪れた際に露見したロシアとの困難な関係性から、北朝鮮政府からの冷ややかな反応、そして、トランプ大統領が脅しとも取れるコメントを添えながら、鉄およびアルミニウム製品への関税の強化の対象から日本を除外しないことを明らかにするなど、安倍首相が前述の取り組みを進めるには深刻な障害がある、とサミュエルズ氏は指摘している。

「自分の友人であり、ナイスガイでもある安倍首相らと会談を行うが、彼らの笑顔を見ることは少ないだろう」とトランプ大統領は発言した。「そしてその笑顔は、『米国からこれほど長い間恩恵を受けていたことが信じられない』という意味だ。そしてその日々は終わりを迎える」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

KKR、今年のPE投資家への還元 半分はアジアから

ビジネス

ニデック、信頼回復へ「再生委員会」設置 取引や納品

ビジネス

スイス中銀の政策金利、適切な水準=チュディン理事

ビジネス

アラムコ、第3四半期は2.3%減益 原油下落が響く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中