最新記事

インフレ

米国、金利上昇で債務再編の荒波到来へ リストラ業界は待望の春

2018年3月19日(月)11時16分

3月14日、金融業界では9年目に入った米国株の強気相場の先行きが心配される中で、ある一角だけはやけに雰囲気が明るい。それは企業のリストラや債務再編を手掛ける業界だ。写真は米国旗とドル紙幣。シンガポールで昨年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White/Illustration)

米国では大規模金融緩和がゆっくり終わりを迎えつつあり、物価と金利は上昇している。このため金融業界では9年目に入った米国株の強気相場の先行きが心配される中で、ある一角だけはやけに雰囲気が明るい。それは企業のリストラや債務再編を手掛ける業界だ。

彼らは今後債務不履行(デフォルト)が増え、資金調達環境全般が厳しさを増すと見込んでいる。株式投資家にすれば縁起でもない話だが、リストラ専門家にとっては事業拡大を期待できる。

何人かのリストラ専門家はロイターに、事業環境の先行きについては2008年の金融危機以降で今が最も楽観的になっており、早ければ来年早々に始まって、何年も続く債務再編の大波が到来する事態に備えていると語った。

アリックスパートナーズの経営再建・リストラ部門グローバルリーダー、リサ・ドナヒュー氏は「われわれは下級職やMBA取得者などの人材を活発に募集している。この先予想されるのは著しい事業の成長と雇用増加だ」と話した。

こうした自信の裏には、金利上昇によって資金繰りの苦しい企業は、かつて緩和マネーが市場にあふれかえっていた局面と同じようには、追加の借り入れや借り換えができなくなるという読みがある。

リストラ専門家は、信用力の低い企業にとって重要な調達先であるジャンク債市場から投資家の資金が流出していることや、物価上昇のために企業の幅広い部分でじわりと経費負担が増大している状況も、自分たちの業界には追い風になると指摘した。

先月ラスベガスで開催された企業リストラ業界の年次会合では、多くの参加者が、何年も縮小が続いてきた事業が転換点に達しているとの見方を示した。

SSGキャピタル・アドバイザーズのマネジングディレクター、マイケル・グッドマン氏は同会合後ロイターに「事業は上向き始めていると思う。過去5年間は、企業に与信面の問題があっても、新規借り入れで問題を解決できた。これからはそれは不可能になり、結果的に債務再編と(ディストレスト資産の)売却が起きる」と説明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中