最新記事

テクノロジー

わが家のアレクサが勝手に広告を読み上げ始める日

2018年1月31日(水)17時00分
クリスティーナ・ボニントン

「紅茶に入れるミルクが欲しい!」と言えば、アレクサからお薦めブランドを紹介されるかも Amazon.com. Inc.

<スマートスピーカーが注文を受けるだけでなく、おすすめの商品やサービスを提案する時代はすぐそこに>

アマゾン・ドットコムの人工知能(AI)アシスタント、アレクサが広告を読み上げる――そんな日が今年中にも来るかもしれない。

経済専門チャンネルCNBCの報道によれば、アマゾンは既に家庭用品大手のクロロックスやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)をはじめ、複数の企業とアレクサでの商品広告について協議中だという。

CNBCはさらに、アマゾンが早ければ年内にも広告配信を始める可能性があると伝えた。ただし同社の広報担当は、そうした「計画」はないと否定している。

今のところアレクサでは、毎日更新されるフラッシュニュースの合間などを除いて、ほとんど広告は挿入されていない。そもそも広告メッセージの代読だらけだったら、ここまで多くの消費者に受け入れられなかっただろう。しかし、アレクサは既に1500万世帯に導入されている。これだけアレクサを愛する人がいるのなら、こっそり広告を紛れ込ませて一稼ぎしたくなるのも無理はない。

もちろん、テレビCMのように騒々しい広告にはなるまい。もっとさりげなく、しかもターゲットを絞った広告になるだろう。例えば「A社の洗剤が切れたから再注文して」と呼び掛けた場合に、同じ会社の新製品を薦めてくるとか。あるいは染み抜きの方法を尋ねたときに、関連する便利グッズの購入を勧めるとか。ユーザーの購入履歴を精査して(いつもアマゾンがやっていることだ)最適な広告や商品を語り掛けるケースも考えられるだろう。

現状では、音声認識端末アマゾン・エコーで広告を流す場合はアレクサの声とは別の声音やトーンを使う決まりになっている。どれがアレクサの返事でどれが広告かを、ユーザーが区別できるようにするためだ。

今後もそうなのか、アレクサの声で広告を読み上げるようになるのかは分からない。いずれにせよ、うまくいけばアレクサに統合された広告は私たちの購買意欲を大いにそそり、一段と私たちの財布のヒモを緩めさせることになる。

微妙なバランスが必要に

しかしアマゾンとしても、広告やスポンサー企業の販促メッセージを投入するタイミングや方法は慎重に判断したほうがいい。広告や商品購入の提案があまりに頻繁だと、アマゾン・エコーの持ち主たちの反発を買うことになるだろう。広告や購入履歴に基づく「おすすめ」の商品があまりに的外れでも、ユーザーに見放されてしまう。

伝えられるところでは、アマゾンも(少なくとも当初は)日用品や、それらの商品を頻繁に購入しているユーザー(つまり予測しやすい絞られたターゲット)を選んで広告投入の対象とするようだ。

そうだとしても微妙なバランスの維持が必要になる。アレクサの語る広告は、画面表示の広告よりも押し付けがましい印象になる可能性があるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中