最新記事

映画

『スター・ウォーズ』最新作は、映画界を新たな銀河に導く最高傑作

2017年12月28日(木)10時20分
サム・アダムズ

レイのフォースはどんどん深まり、レジスタンスのピンチを救うことも © 2017 LUCASFILM LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

<黒澤やペキンパー作品を彷彿させる芸術性の高さ――映画界の未来をも変え得る『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』>

最近の映画界の傾向として、壮大なシリーズ物では、テレビ出身の監督が成功を収めるケースが多い。

『アベンジャーズ』などアメコミのスーパーヒーロー映画を大ヒットさせたジョス・ウェドン監督しかり、『ハリー・ポッター』シリーズ後半を手掛けたデービッド・イエーツ監督しかり。2年前に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を世に送り出したJ・J・エイブラムズ監督もテレビ出身だ。

これらの監督が手掛けた作品は、確立された形式を(時々見事に)いじってある。ただしそれは元の形式を大きく作り変えるものではなく、テレビ出身者ならではのスケジュール重視の進行のせいか、芸術的と呼べるほどの斬新さは見当たらないことが多い。

『スター・ウォーズ』シリーズ8作目に当たる最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を手掛けたライアン・ジョンソン監督も、テレビと映画の両方でヒット作を世に送り出してきた人物だ。なかでも高校の化学教師が裏の世界に落ちていくドラマ『ブレイキング・バッド』は、社会現象と言えるほど話題になった。

ジョンソンは『最後のジェダイ』で、脚本もたった1人で務めた。これは『スター・ウォーズ』の生みの親であるジョージ・ルーカス以来のこと。製作会社ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ社長には、不安も大きかったはずだ。

ギャレス・エドワーズ監督に任せた外伝『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、別の監督による撮り直しがかなり必要だった。若きハン・ソロを主人公とする18年公開のスピンオフ映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』も、フィル・ロードとクリストファー・ミラーの両監督から、ロン・ハワード監督へ交代した。

だが、『最後のジェダイ』を一場面でも見れば、そんな懸念は杞憂だったことが分かる。ジョンソンは本作で、小うるさい映画評論家と熱狂的な『スター・ウォーズ』ファンの両方をうならせるだろう。しかも『最後のジェダイ』は、シリーズ全作の根底に脈々と流れる精神を受け継いでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中