最新記事

中韓関係

韓国大統領が中国で受けた、名ばかりの「国賓待遇」

2017年12月22日(金)16時40分
前川祐補(本誌記者)

就任後初めて訪中した韓国の文在寅大統領 Nicolas Asfouri-REUTERS

<中韓の関係改善をアピールするはずが、逆に韓国に対する中国の冷遇ぶりが注目される結果に>

12月13日に初訪中した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領だったが、数々の冷遇を受けて傷心癒えぬまま帰国する羽目になった。

今回の訪中は、在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備で冷却化した二国関係の改善を確認することが目的だった。ところが通常の国賓待遇では大臣らが空港で出迎えるのに、現れたのは次官補と格下扱い。文はのっけから冷遇された。

さらに両国が11月の首脳会談で封印したはずのTHAAD問題について、中国の習(シー・チーピン)近平国家主席が首脳会談で容赦なく言及。対北朝鮮政策では、文は習が主導した合意文書に追随しただけで、韓国が中国に求めた日米と足並みをそろえる「制裁による圧力」の文言は合意文書の片隅に追いやられた。首脳会談後の共同声明もなく、韓国はいいように扱われ続けた。

文の訪中について、新潟県立大学の浅羽祐樹教授は「完全に中国になめられた。韓国が得たものは何もない」と酷評する。

実際、THAAD配備により韓国が中国から受けた経済制裁は全面解除されておらず、文が切望する来年2月のピョンチャン(平昌)五輪への習の出席についても確約が取れていない。

こうした失態は、韓国の外交担当者のレベルが低いことが一因だと、浅羽は指摘する。「中国指導部がこぞって南京事件の追悼式典に行く日に文が到着するなど、日程に無理があった」

冷遇ぶりに加えて注目を集めたのが、文に同行した韓国の記者団が中国の警備員に殴打された事件。詳細は不明だが、韓国メディアは韓国そのものが殴られたのも同然だと怒りをあらわにする。一方の中国は「関心を表明」するだけで素知らぬ顔だ。

それでも、経済や対北政策で中国の協力が必要な韓国は非礼に甘んじざるを得ない。中国が優位に立つなか、関係改善の実態は韓国の「服従」なのだろう。

<本誌2017年12月26日号[最新号]掲載>


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、カリフォルニア州で販売停止命令 執行は9

ワールド

カナダ、北極圏2カ所に領事館開設へ プレゼンス強化

ワールド

香港トップが習主席と会談、民主派メディア創業者の判

ワールド

今年のシンガポール成長予想、4.1%に上方修正=中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中