最新記事

ネットアイドル

整形、年齢詐称、生存競争......中国ストリーミングアイドルの過酷な現実

2017年12月14日(木)18時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ファンファンは普段、髪のセット、メイクアップ、着替えなどの準備に2時間、ライブストリーミングだけで5~6時間費やす。でも仕事はまだ終わらない。写真や動画を中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に投稿したり、他のSNSでもフォロワーと交流するので大忙し。これもすべて、自分の生計を立てるための努力だ。

それでも「どんなに頑張ってもライブストリーミングで生きていけるのはせいぜい5年間」だ。「この先キャリア変更は避けられないから、お金を稼ぐ他の方法を探している」と語るファンファンは、飲食店への投資のかたわら、自身もライブストリーミングアイドルからファッションブロガーに転向しようと、ウェイボーで女性の支持を集めることに力を注ぐ。

視聴者の気持ちを掴む行為がエスカレート

中国ではピークの時間帯には100以上のプラットフォームがライブストリーミングを行っている。スイスの金融大手、クレディ・スイスの推計では、2017年のライブストリーミング市場は50億ドル(約5630億円)規模に達する。これは昨年の中国国内での映画興行収入の58億ドルに迫る勢いで、家にいながらスマートフォンで楽しむエンターテインメントが浸透している証拠だ。

ただ、市場が膨らむにつれ配信者は「プレゼント」をくれる視聴者を獲得するために過激な手段に走りがちだ。国営英字紙チャイナ・デイリーは「配信者のなかには、わいせつや危険なものでアピールする人もいる。目的はお金だ」と指摘している。

実情は深刻で、高層ビルの屋上から命綱なしでセルフィーを撮ることで有名な26歳の中国人男性が、今年11月に撮影中に62階建のビルの屋上から落ちて死亡する事故も発生。皮肉にも自分で設定したカメラには彼の最後の瞬間が収められていた。

ライブストリーミングで成功すれば、年間数百万元(数千万円)を稼ぐことも不可能でないという。しかし、そこに到達する配信者など実際にはほとんどいない。 中国のインターネットリサーチ企業、テンセント・リサーチ・インスティテュートが今年5月に発表したレポートによると、調査対象となった中国のライブストリーミング配信者4500人のうち1カ月の収益が1万元(約17万円)を超えたのはわずか5%で、7割以上の配信者は100元(約1700円)にも満たなかったという。

簡単に人気や収入を得られるイメージで、ストリーミングアイドルという仕事は女性に憧れさえ抱かせる。しかし、現実をしっかり考えなければいけなそうだ。


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強

ワールド

イランとパキスタン、国連安保理にイスラエルに対する

ワールド

ロシア、国防次官を収賄容疑で拘束 ショイグ国防相の

ワールド

インドネシア中銀、予想外の利上げ 通貨支援へ「先を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中