最新記事
犯罪

フィリピン麻薬戦争 防犯カメラが伝える捜査という名の残虐行為

2017年12月6日(水)17時46分
ロイター


「命令に従っただけ」

警察の作戦も、おとり捜査のようには見えない。映像に映る警官たちは、ほとんどが私服で、その大半は明らかに武器を携行しており、一部は防弾ベストも着用している。彼らはカンポさんやバイタスさんの住む路地を通ってこのエリアに入った。銃撃が始まる7分前、彼らは犠牲者の家からよく見える場所を通過している。

バイタスさんの妻アーリーン・ギバガさんは、銃撃を目撃したとロイターに語り、殺された3人の男性は丸腰だったと述べた。3人の幼い子どもを持つギバガさんは、「銃を買うような余裕はない」と言う。また、夫のバイタスさんは、麻薬取引を行っていないと述べた。

自宅隣の路地に住む男性を拘束した警察は、彼女にバイタスさんの身分証明書を提出するよう求めたという。彼女が夫の身分証明書を提示すると、警官1人が「確定だ」と叫び、警官たちはバイタスさんに発砲を始めた、とギバカさんは語る。

警察官たちがバイタスさんを撃つのを見て、「夫に何をするの」と悲鳴を上げた彼女は、「報告してやる。ここには防犯カメラがあるのだから」と叫んだ。すると、警察官1人が今度は彼女に銃を向け、家に入るように告げたという。

映像には、警官が3人の男性を撃つところは映っていないが、警官1人が、画面外の標的に対して射撃を開始しているように見える。それからカンポさんが仰向けに倒れる格好で画面に入り、地面に叩きつけられた。彼の腕はしばらく動いているが、やがて動かなくなった。

1分も経たないうちに、銃撃場面を捉えたカメラは実質的に機能しなくなった。誰かがカメラを壁側に向けてしまったのだ。2番目のカメラには、警官が手を伸ばし、カメラの向きを動かす様子が映っている。

パスキュアル署長は、カメラの向きを動かしたのは「正当な治安上の理由」によるもので、作戦に邪魔が入らないためだと言う。

署長は声明で、報告書の説明を繰り返した。「容疑者がまず銃を抜いて、捜査員を撃った」ため、正当防衛で撃ち返した、というものだ。

ギバガさんはその日遅く、マニラ第2警察署で「苦情を申し立てても無駄だ」と署員に言われたと語る。その署員は彼女に、「あなたが戦おうとしている相手は政府だ」と告げたという。「私たちに腹を立てないでくれ。単に命令に従っているだけなのだから」

(翻訳:エァクレーレン)

Clare Baldwin and Andrew R.C.

[マニラ 27日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 9
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 10
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中