最新記事

火災

韓国のビル火災で死者29名けが人29名 はしご車故障などで被害拡大

2017年12月22日(金)08時03分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

29人の犠牲者を出した韓国堤川市のビル火災が発生した瞬間。(c) YTN / YouTube

<韓国中央部の堤川市にあるサウナなどが入ったビルで火災が発生。これまでに死者29名、負傷者29名が確認される大惨事となった>

21日夕方、韓国中央部の忠清北道堤川市(チュンチョンポクドチェチョン市)にある8階建ての雑居ビルで火災が発生。2時間経って火の勢いは鎮まったが、建物内を捜索している消防当局によると、29名が死亡、29名が負傷という大惨事となった。

NEWSISなどの韓国メディアが伝えるところでは、火災は午後3時53分ごろに8階建てビルで発生。電気工事をしていた1階駐車場からあがった火の手は瞬く間に建物全体に燃え広がったという。


火災が発生した瞬間を捉えた防犯カメラの映像 (c) YTN / YouTube

ビルは2〜3階がサウナ、4〜7階がフィットネスクラブ、8階がレストランが入っていたが、死亡した人のうち20人は2階にある女性用サウナで発見されている。

通報を受けた消防当局は消防車と救急車20台余り、消防隊員60人、ヘリコプター2機を出動させたが、予想以上に火の手が早く、思うように消火活動ができない現場の状況などもあって鎮火まで2時間近くかかったという。

消防のはしご車が使えず、清掃会社のクレーン車で救助

消防当局の関係者が語ったところでは、消火活動に出動した消防車が現場周辺に到着したが、周辺に違法駐車した車両が多かったため、火災現場に接近するまで時間がかかったという。

またビルの上層に逃げた人たちを救出するため27メートルまで伸びるはしご車が派遣されたが、故障のためにはしごが伸びないというトラブルに見舞われた。この状況を知った外壁清掃を行う民間業者が、クレーン車を現場に向かわせ、8階で避難を待っていた人たち3名を救助したという。


被害が拡大したのは人災か? (c) SBS / YouTube

だが、今回の火災で一番問題になりそうなのが、わずか2ヵ月前にリニューアル工事を終えたというこのビルの外壁工法だ。壁に発泡スチロールを吹きつけ、その上からセメントを重ねるという手法が使われていたが、2015年に130名あまりの死傷者を出した京畿道議政府(キョンギドウィジョンブ)のマンション火災でも同じ工法が使われていた。今回の火災でも発生直後からビルの内外を黒煙が包み込み、建物内にいる人たちが逃げ遅れた。

さらに消防の捜査が進むにつれ、貨物用エレベーターを通じて火事が広がったことも分かった。22日朝に記者会見をしたイ・サンミン堤川消防署長は「木材とタイルで内装された貨物用エレベーターと主出入口を通じて火と煙が非常に早く上がって、2階にいた人たちが逃げ遅れたと思われる」と語った。署長の言葉を裏付けるように犠牲者たちは貨物用エレベーターが止まる階で発見されており、通り過ぎる3〜5階では犠牲者がいなかった。

また、被害が集中した2階サウナについては非常口が利用者の使うかごで塞がれていたという目撃者の証言もあるという。

韓国政府は行政安全部(日本の総務省に相当)が事故対策室を堤川市役所内に設置したが、一夜明けた22日朝もまだビル内には煙がこもって犠牲者の捜索は続いており、さらに犠牲者の数が増えることも予想される。

*情報を更新いたしました(12月22日午前8時3分)


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中