最新記事

アニメ

リビアのコミコンが危ない イスラム武装警察に殴られ裁判に

2017年11月8日(水)19時00分
クリスティーナ・メイザ

2016年に開催されたリビアのコミコンは無事だったのだが Comic Con Libya

<世界に広がるコミコンにストップがかかった>

リビアの首都トリポリで11月4日、コスプレ男女が集うアニメファンの祭典にイスラム武装警官「抑止隊」がなだれ込み、主催者らを殴打、拘束した。現場近くからのフェイスブック投稿でわかった。

先週末、トリポリのコミコン(コミック・コンベンション)会場には、日本やアメリカのアニメキャラに扮した若者数百人が集まっていた。抑止隊はそこへ押し入り、リビアの若者にイスラム教を放棄させ、暴力を促したとして、主催者を糾弾した。

抑止隊は、フェイスブックページで次のような声明を出した。

「外国から入ってきたこの種のイベントは、イスラム教徒の信仰の迷いや外国文化への憧れにつけ込むものだ。ポルノをまき散らし、青年の心を食い物にして人殺しを育てる破壊的な文化とは戦う」「若者の救出は我々の義務だ」

コミコンは1970年代にアメリカで漫画ファンが集まって開催したのが始まりだ。その後世界中に広がって、リビアも昨年初めてコミコンを開催した。昨年は無事終了し、今年も正式な開催許可が下りていた。だがイスラム厳格派「サラフィスト」のアブドゥル・ラウーフ・カラが率いる抑止隊は、コミコンをイスラム教に対する冒涜行為とみなしたようだ。

目撃者の話によれば、少なくとも20人が拘束され、コミコン主催者の多くが激しく殴打された。強制的に丸坊主にされ、イスラム教の講義を受けさせられた者もいたという。漫画の戦闘シーンで若者の暴力を助長したという理由で、展示品や漫画は没収された。コミコンのフェイスブックページは閲覧禁止になった。

今後、逮捕された主催者たちは裁判にかけられると、抑止隊は声明で明らかにした。どのような刑罰を科せられるのかは不明だ。

2011年に元最高指導者ムアンマル・アル・カダフィ大佐が殺害されて以降、リビアは内戦状態に陥っている。数百の武装集団が活動する一方、国連が支援する政府は首都の支配もままならず、国家が分裂状態にある。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オランダ企業年金が確定拠出型へ移行、長期債市場に重

ワールド

シリア前政権犠牲者の集団墓地、ロイター報道後に暫定

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ麻薬積載拠点を攻撃と表明 初

ワールド

韓国電池材料L&F、テスラとの契約額大幅引き下げ 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中