最新記事

北朝鮮

北朝鮮、観光と兵器で生き残り図る? 金正恩が元山に見る夢

2017年10月23日(月)16時32分

正恩氏の元山開発プロジェクトに、海外から大口の参加を申し出る声はまだ聞こえてこない。2015年に完成した新しい空港だが、国際線はまだ開通していない。米国は最近、自国民による北朝鮮渡航を禁止しており、国際制裁は今や北朝鮮との共同事業を全面的に禁じている。

とはいえ、元山開発プロジェクトは正恩氏にとって戦略的に不可欠だと複数の元北朝鮮外交官は語る。

2011年に最高指導者となった正恩氏が継承したのは、表向きは軍が支配しているものの、実際には人々が主に闇市場の取引でどうにか生活している社会だった。

北朝鮮は、公式には社会主義経済の国だが、実際には北朝鮮国民10人中7人が生きるために個人取引に依存していると、2016年に韓国に亡命した北朝鮮の太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使は述べている。

外からは全権力を握っていると思われている正恩氏だが、北朝鮮の自由市場の商人の存在により、目に見えるよりももっとぜい弱だと、太氏はロイターに語った。

正恩氏は生き残るため、軍と市場の両方を利用する方法を模索している。

核兵器は同氏の答えの1つである。北朝鮮が保有する従来の重火器よりも維持費がかからないことを期待しているからだ。元山開発のようなプロジェクトもまた1つの答えである。軍への資金配分を減らし、民間経済により多くの資金を分配したいと考えている。

「社会を管理し長期政権を保証するのは、経済において役割と影響力が増したときだけだと、金正恩氏は知っている」と太氏は言う。

フレンドリー

北朝鮮は近いうちに年間100万人以上を、また、「近い将来には」年間約500万─1000万人の観光客を呼び込みたいと、元山開発への投資を募るパンフレットには記されている。プロジェクトを監督する北朝鮮の国家機関、元山地区開発総会社はコメント要請に応じなかった。

訪朝者に関する最新の統計はない。中国は、2012年に23万7000人超の中国人が北朝鮮を訪れたとしているが、翌年には統計発表をやめてしまった。一方、2016年には800万人の中国人が韓国を訪問している。

韓国のシンクタンク「韓国海事研究所」の試算によると、北朝鮮の観光収入は年間約4400万ドル(約49億円)で、同国の国内総生産(GDP)の0.8%程度。また、北朝鮮への外国人観光客の約8割が中国人で、残りは西側諸国とロシアからの訪問客で占められるという。

「この地帯の当局者と住民は観光業を十分に理解しており、観光客に対してフレンドリーです」と、元山のパンフレットの1つには記してあり、観光客を歓迎している。

パンフレットはまた、全体主義国家の休暇について、いくつか独特な習慣を露呈している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中