最新記事

座談会

中国政治ブロガーが指南する党大会の楽しみ方(もちろん人事予想付き)

2017年10月12日(木)19時33分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

2015年の全国人民代表大会にて。習近平総書記が話し掛けている右の人物は現常務委員の劉雲山で、10月18日から始まる十九大で引退する見込み Jason Lee-REUTERS

<鋭い中国政局予測を展開する日本人ブロガー、水彩画氏とUJC氏。なぜゴシップ情報が飛び交うのか。日本メディアはどこから情報を得ているのか。出世コースは今も変わらないのか。そして十九大の常務委員予想は? さあ始まり始まり~>

突然の総選挙で大騒ぎとなった日本政治、連日ワイドショーで特集が組まれるさまは政治の娯楽ショー化を思わせる。もっとも、日本人ばかりが脳天気なのではない。世界のどの国においても床屋政談を楽しむ人々はいる。一党独裁を続ける中国も例外ではない。10月18日に開催される5年に1度の党大会(中国共産党第19回全国代表大会、通称「十九大」)を控え、床屋政談家はお祭りモードである。

中国では政治絡みのニュース、中国語でいうところの"敏感"なニュースは厳しく規制されているが、それにもかかわらず、いや信頼できる情報がないからこそ余計に、人々が妄想たくましくわいわい楽しめる格好の娯楽となっているのだ。

5年に1度の政治ショーをいかに楽しむべきか。日本人ながらも、楽しみつつ鋭い中国政局予測を展開する2人の中国政治ブロガーに話を聞いた。ブログ「中国という隣人」の管理人である水彩画氏と、ブログ「The Useless Journal of CHINA」の管理人、UJC氏だ。

◇ ◇ ◇

――中国では政治に関するメディアの報道は厳しく規制され世論調査もありません。政治談義を楽しもうにも材料がないように思われますが?

水彩画 材料が全くないってのは違いますよ。例えば公式報道。私は「葬式ウォッチャー」を名乗ってますが、中国共産党の老党員が死去するたびに誰が参列したのか、誰が電報を送ったのかなどチェックしてます。中国共産党の指導者、元老にとって葬式はアピールチャンスですからね。名前をともかく出して存在感を示すわけですよ。というわけで、公式報道を丹念にチェックすることで手がかりが得られます。

もちろん裏を読まなきゃいけないので難しい。先日は王岐山・中央紀律検査委員会書記が、ある著名研究者の葬式に花束を贈っていないことが話題となりました。政治局常務委員7人のうち、彼だけが送っていない。王岐山は党大会で引退か留任かが取り沙汰されている人物ですから「花束を贈っていない! 失脚のきざしか!」などと話題になったのですが、実は王岐山って学者の葬式にはほとんど花束を贈っていないんですね。実務派で知られる人物なので、あんまりこうしたアピールが好きじゃないというだけかもしれません。なのに誤解が広がって大騒ぎに。

中国で床屋政談を楽しんでいる人たちは、こういう穴だらけの情報で一喜一憂していますよね。情報が少ない分、妄想力で勝負しなければいけない部分もあるんですが、それだけに確認できる部分はちゃんとチェックする細かさがないとただの妄想だけで終わってしまいますね。事実を積み上げて土台を作り、足りない部分は予測で補うわけです。

UJC 公式情報以外では外国華字メディアの報道に注目します。アメリカに本拠を置く明鏡は、前回の十八大で中央政治局常務委員7人、中央政治局委員25人全てを当てるという離れ業を成し遂げました。同じくアメリカの多維は十七大では出色の報道が多かったのですが、中国の資本が入ったとか入らなかったとかで、最近はおとなしめですね。権力争いの過程において敵の足を引っ張ろうと海外メディアに情報を流すのは常套手段ですよ。

水彩画 あるある(笑)。突然、高級官僚***は母乳風俗店に通っているとかいう記事が出てきたりね(笑)。

UJC リークの最大の発信源となってきたのが香港政治ゴシップメディアなんですが、この5年間で激しく衰退しました。中国資本が入った正規の書店販売ルートからは締め出されましたし、銅鑼湾書店事件(2015年秋以降、政治ゴシップ本の出版社、販売書店の経営者らがタイや香港から拉致され、中国当局に逮捕された事件)の萎縮効果もあります。政治ゴシップ本の多くは中国本土の人が購入していました。本土では買えない、香港名物のお土産ですよ(笑)。今じゃ空港など観光客が多い場所では売れなくなって、商売的に厳しくなっていると聞きますね。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル155円台へ上昇、34年ぶり高値を更新=外為市

ビジネス

エアバスに偏らず機材調達、ボーイングとの関係変わら

ビジネス

独IFO業況指数、4月は予想上回り3カ月連続改善 

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中