最新記事

中国政治

孫政才、一帯一路が生む新たな腐敗の構図

2017年10月11日(水)17時45分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

一帯一路が生む新たな腐敗の構図に怯える習近平国家主席 REUTERS

元重慶市書記・孫政才の党籍が剥奪され、重慶市の党大会代表十数名が代表を取り消された。「政敵を根こそぎ」という分析があるが、違う。習近平が最も恐れていた一帯一路に新しい腐敗が生まれ始めたのだ。

孫政才の党籍剥奪と重慶市代表の取り消し

今年7月に拘束された重慶市書記(=中国共産党重慶市委員会書記)だった孫政才は、第18回党大会7中全会を待たずに、9月29日、党籍が剥奪された。中共中央紀律検査委員会の報告を中共中央政治局会議が採決して決まった。それに伴って、10月18日に開幕する第19回党大会の重慶市委員会代表も同時に取り消され、2300人の党大会代表の数が、結果的に13人少なくなり、2287人という異例の事態となった。

これに関して、「習近平の政敵、孫政才に連なる関連幹部をも徹底的に潰しておかないと権力闘争に禍根を残すから」といった分析が散見されるが、それは適切ではない。

まず孫政才を「ポスト習近平」だった人物と位置づけるのも正しくない。孫政才はあくまでも李克強国務院総理の次期候補者であったのであって、習近平総書記あるいは習近平国家主席の後釜としてリストアップされたことは一度もない。「ポスト李克強」であった。

つぎに孫政才は共青団の流れでもなければ江沢民の流れでもなく、どちらかと言えば、遠くは温家宝夫人の愛顧を得、次は劉雲山の息子との因縁浅からぬ関係により腐敗に入っていった経緯があるため、「腐敗」以外で、習近平の「政敵」といった存在ではなく、特に属している派閥もない。

一帯一路における新しい腐敗

孫政才の最も大きな罪は、習近平が国家プロジェクトとして中華民族の命運をかけている「一帯一路」(陸と海の新シルクロード)経済圏における新しい腐敗の温床を創り出したことにある。

実は一帯一路沿線国家の「文明度」は必ずしも高くなく、賄賂や口利きなどが日常現象である国が多い。習近平政権以来、中国国内では腐敗摘発が厳しいので、沿線国に入ると、いきおい気が緩み、元の中国流文化が一瞬で復活し、腐敗に巻き込まれることもあれば、むしろ自ら積極的に腐敗行動に走る場合もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 7
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 10
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中