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米人種差別

北朝鮮の次はNFLを「口撃」、スポーツまで敵に回したトランプ

2017年9月25日(月)19時00分
ティム・マーチン

国歌斉唱の間、片膝をつく選手(前列)と互いに腕を組むコーチ陣 Paul Childs-Reuters

<黒人差別に抗議して、国歌斉唱で起立しないスター選手たちにトランプの怒りが爆発、「敬意を払わないならクビだ!」と言った結果、NFLは大変なことになった>

NFL(全米プロフットボールリーグ)の9月24日の試合前、選手ばかりかコーチやオーナー、歌手までが国歌斉唱時に起立せず、ドナルド・トランプ米大統領に反旗を翻した。人種差別に抗議して国歌斉唱時に片膝をつく選手がいることに対し、トランプがクビにすべきだ、とツイートしたからだ。

全米各地で試合が行われた24日の日曜に、NFLのほぼ全チームの約200人の選手が互いに腕を組んだり、拳を突き上げたり、片膝をついたりして連帯を示し、抗議した。オーナーがトランプの友人であるニューイングランド・ペイトリオッツでさえ、国歌斉唱時に多数の選手が膝をつき、クオーターバックのスター選手、トム・ブレイディも立ってはいたが腕を組んでいた。

シアトル・シーホークスとテネシー・タイタンズの両チームは、国家斉唱の間ロッカールームに残った。グリーンベイ・パッカーズの選手の多くは座り込み、シンシナティ・ベンガルズの選手は腕を組んだ。

シーホークスの声明は大胆で断固としたものだった。「チームとして、国歌斉唱に参加しないと決定した」「有色人種に対して蔓延する不当行為を、我々は決して支持しない。アメリカへの愛と、アメリカのために犠牲になってきた人々に敬意を表すためにも、自由を否定する者には団結して反対する。あらゆる人々が平等と正義を得られるよう、今後も活動を続ける」

チーム関係者だけではない。デトロイトで国歌斉唱をした歌手リコ・ラベルは、歌い終えると片膝をつき拳を突き上げた。

(驚くべき瞬間──国歌斉唱を終えた歌手が片膝をつき......)

怒りがエスカレート

発端は9月22日、トランプがアラバマ州の演説で、国歌斉唱時に起立しない選手は国家に対する敬意がないとしてやり玉にあげたことだ。トランプはこうツイートした。「NFLの選手が星条旗やアメリカに対する無礼な態度を改めるまで、NFLのファンが試合をボイコットしたらどうか。クビか、出場停止だ!」「NFLの観客動員数や視聴率は下り坂だ。試合が退屈なのは事実だが、そもそもの理由は、多くのファンがアメリカを愛しているからだ。NFLはアメリカの味方であるべきだ」

さらにNFL選手の抗議を見ると、「腕を組むのはいいが、膝をつくのは容認できない。視聴率が悪いわけだ!」と反発した。

NBA(米プロバスケットボール)の昨季王者ゴールデン・ステート・ウォリアーズについては、スター選手のステファン・カリーがトランプに抗議して表敬訪問に参加したくないと言ったので「招待を取り消す」とツイートした。カリーを支持したクリーブランド・キャバリアーズのレブロン・ジェームズも批判した(ウォリアーズはその後、全員一致でホワイトハウス訪問を取りやめた)。

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