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制裁措置

北朝鮮の制裁逃れはこうして続く

2017年8月30日(水)11時40分
ダニエル・ソールズベリー、エンディ・マト(ジャーナリスト)

ケイ・マリーンの事業の全容は明らかになっていないが、この動画や、16年に制裁対象に指定されたこと、00年代半ばに北朝鮮との事業提携を発表していることなどから考えると、北朝鮮製の武器販売の「代理店」とみられる。07年のマーケティング資料には、北朝鮮と「攻撃用舟艇の製造」で協力するとも記されているので、関係はさらに深いようだ。

グローコムとケイ・マリーンは、既に明らかになっていた現実を改めて浮き彫りにする。北朝鮮は、武器禁輸を含む広範囲な経済制裁にもかかわらず、今も武器と軍事関連機器の販売で利益を得ている。

特にグローコムは、国連の報告書によると、北朝鮮の「制裁回避の手法が次第に洗練されている」ことを物語る。すなわち、「第三国に企業を設立して、地域の主要な見本市に参加し、複数の国に高度な武器や関連商品を販売することによって、国際的な認知度を確立する」のだ。

ケイ・マリーンも、詳細な情報は限られているが、第三国の既存の企業を販売経路として利用していることがうかがえる。

【参考記事】トランプ ─ 北朝鮮時代に必読、5分でわかる国際関係論

いずれの会社も信頼できる「表の顔」となり、北朝鮮の関与を見えにくくしている。グローコムは昨年、マレーシアで2年に1回開催される武器見本市「ディフェンス・サービシズ・アジア」に3回目の出展をした。ケイ・マリーンは14年に、オーストラリア政府と約200万豪ドル(約1億8000万円)の契約を結んでいる。

マレーシアだけではないはずだ。さまざまな国で、グローコムやケイ・マリーンのような企業が北朝鮮の手足となっているのだろう。

アメリカは長年にわたり、北朝鮮の資金源となっている不法取引を阻止しようとしてきた。ドナルド・トランプ米大統領は北朝鮮への対応をめぐり中国に圧力をかけているが、芳しい成果はないようだ。

マレーシアの現実は、北朝鮮が巧みな戦略で国際活動を展開している証しであり、手ごわい相手になりつつあることをうかがわせる。

From thediplomat.com

[2017年8月 8日号掲載]

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