最新記事

言論

ケンブリッジ大学出版局が中国検閲受け入れを撤回

2017年8月23日(水)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

悠久の学問の権威、ケンブリッジ大学 bdsklo-iStock.

ケンブリッジ大学出版局が習近平政権の圧力に屈服したニュースは、全世界の多くの学者からの激しい非難を招いた。耐えられなくなったのか、大学側は検閲受け入れを一転して撤回した。自由と尊厳、未だ死なず。日本は?

ケンブリッジ大学出版局が一転して撤回

筆者は8月21日のコラム「ケンブリッジ大学がチャイナ・マネーに負けた!――世界の未来像への警鐘」で、ケンブリッジ大学出版局(Cambridge University Press, CUP)が、習近平政権の要望を受けて、天安門事件などの中国政府に不利な論文へのアクセスをブロックした事実を書いた。

しかしその後、中国などの独裁国家を除いた全世界の多くの学者からの激しい失望の声と批判および非難署名文までが寄せられ、CUPは遂に前言を翻して、中国の検閲受け入れを撤廃した。

言論の自由が許されている国家では、「言論の自由」と「人間の尊厳」の方が、チャイナ・マネーを凌駕することを証明してくれた意味で、この一連の出来事は実に大きい。

まず、どの新聞社が、どのようなタイトルでこの新情報を報道したかを見てみよう。

たとえばイギリスの「ガーディアン(the Guardian)」は、Cambridge University Press backs down over China censorship(CUPは中国の検閲を撤回した) というタイトルで報道し、BBCはCambridge University Press reverses China censorship move(CUPは中国の検閲への対応を覆した)という見出しで報道した。

アメリカではワシントンポストがIn reversal, Cambridge University Press restores articles after China censorship row(一転して、CUPは中国の検閲を受けた論文を復帰させた)という記事を、USA TODAYが Cambridge University Press reverses bow to China censorship after backlash(CUPが大衆の批判を受けて、中国の検閲に屈服したことを覆した)という批判記事を公開した。

「検閲の輸出」は要らない

それら多くの批判の中で注目されるのは「検閲の輸出」という概念だ。中国はトランプ大統領の誕生によりアメリカの時代は終わったとして、「中国こそがグローバル経済のリーダーである」という顔をしているが、警戒する諸外国に習近平国家主席はたびたび「中国は政治を輸出しない」という言葉を使って、「中国は政治的圧力を、経済交流をする相手国に決してかけない」と宣言してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏の昨年資産報告書、暗号資産などで6億ドル

ワールド

イラン、イスラエルとの停戦交渉拒否 仲介国に表明=

ワールド

G7、中東情勢が最重要議題に 緊張緩和求める共同声

ワールド

トランプ氏、イスラエルのハメネイ師殺害計画を却下=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中