最新記事

ISIS

香港のインドネシア人メイドたちが「ISISの過激思想に感化されている」

2017年7月27日(木)16時00分
ジャック・ムーア

インドネシア人メイドは出稼ぎ先の香港で寂しさから精神的な支えを求めたようだ Bobby Yip-REUTERS

<ISISのネット活動によってインドネシア人メイドが香港で過激思想に感化されるケースが増加。安全保障上の深刻な懸念材料になっている>

香港で働く家事労働者がテロ組織ISIS(自称イスラム国)のリクルーターによって、過激思想に感化されるケースが増えていると、安全保障専門のシンクタンクが警告した。

インドネシアに拠点を置く紛争政策分析研究所が26日に発表した報告書によると、香港に出稼ぎに行ったインドネシア人の家事労働者50人前後がISISの影響下に入っているという。

インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を抱える国で、国民の9割近くがイスラム教徒だ。 「インターネット上で知り合った恋人がISISの戦闘員で、その男に誘われてISISに入った女性もいれば、過激思想に精神的な支えを見出し、自分から入った女性もいる」と、報告書は指摘している。

香港に滞在するインドネシア人はざっと15万人。ISISの影響を受けた家事労働者はごく一部にすぎないが、彼女たちの存在は安全保障上の深刻な懸念材料になる。

【参考記事】「ジハードって楽しそうだ」ISIS崩壊後、洗脳された子供たちは...

香港で働くインドネシア人の多くは家事労働者で、フィリピン人やマレーシア人のメイドと比べ、賃金が安いことから多くの家庭で採用されるようになった。 だが彼女たちを過激思想に走らせるのは劣悪な労働条件ではない。

出稼ぎ先で寂しくなって仲間を求めたり、シリアにいる戦闘員をヒーローのように思い込んだり、個人的な悩みから過激思想に救いを求めるケースが多いと、報告書は指摘している。インドネシアのイスラム教指導者は香港にいる同胞に積極的に手を差し伸べているが、そうした指導者の中にも過激な思想を広める者がいる。

さらにネット上で戦闘員と親交を深め、彼らを支えるためや戦闘に加わるためにシリアに向かう女性たちもいる。

インドネシア政府が香港への出稼ぎを斡旋する会社と密接に連携して、女性たちが過激なネットワークに近づかないよう注意喚起する必要があると、報告書は提言している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中