最新記事

アメリカ政治

米議会で債務上限引き上げをめぐる攻防再び

2017年6月1日(木)20時00分
マシュー・クーパー

行政改革に関する大統領令に署名したトランプとマルバニー(左) Jonathan Ernst-REUTERS

<アメリカにデフォルトの危機が再来。すぐにも債務上限を引き上げなければ資金調達ができなくなるが、保守強硬派は財政支出削減が条件と譲らない>

トランプ米政権は、大きな問題を抱えている。悪くすると、世界を巻き込む危機になりかねない。連邦政府の資金調達が予定通りに進まず、すぐにも新たな借り入れをしなければならないかもしれないのだが、米議会が連邦政府の債務上限を引き上げてくれない限り、借り入れは増やせない。そうなると、米政府は国債の元利金などが支払えなくなるデフォルト(債務不履行)も免れない。

アメリカが突然デフォルトに陥れば、世界の金融システムが混乱する。米ドルは、世界で最も安全な資産され、世界各国が外貨準備として保有する。万一ドルへの信頼優位が揺らげば、世界的な金融危機の引き金を引きかねない。招きかねない。

デフォルトはおそらくないとしても、依然として深刻で極めて高くつきそうな問題は存在する。

この問題は過去にも何度か浮上した。オバマ政権下の2011年には、共和党が歳出削減を条件に債務上限の引き上げに反対した。民主党との対立が続くなか、市場では米国債に対する絶対的な信用が揺らぎ始めた。夏に土壇場で合意に達し、デフォルトは回避されたが、格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が米国債の格付けを引き下げた結果、米政府の借り入れコストは上昇した。

保守強硬派はデフォルトに危機感なし

そして今年、スティーブン・ムニューシン米財務長官は議会に対し、歳入が思うように上がっていないので、8月に議会が休会する前に「付帯条件なし」で債務上限を引き上げるよう求めた。だが、共和党の保守強硬派下院議員で構成する議員連盟「フリーダム・コーカス」は、歳出削減とセットでなければ債務上限の引き上げには応じないと今から噛みついている。ムニューシンが、デフォルト寸前だった2011年の悪夢の再来を懸念するのは当然だ。

【参考記事】「財政の崖」危機と米国債格下げのから騒ぎ

議会の駆け引きを難航させそうなのが、米行政管理予算局(OMB)のミック・マルバニー局長だ。共和党下院議員でフリーダム・コーカスの共同創設者でもあるマルバニーは、財政保守派として知られ、歳出削減なしでは債務上限引き上げに応じたくない立場だ。債務上限が引き上げられなかったときの混乱に対する危機感が、ムニューシンほど強くないのだ。「米国債がデフォルトになれば、世界経済に甚大な被害をもたらす」とマルバニーは1月に上院議員に向けた書簡で述べた。「だからといって債務上限を引き上げれば絶対に事態を打開できるとも思わない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

サハリン2のLNG調達は代替可能、JERAなどの幹

ビジネス

中国製造業PMI、10月は50.6に低下 予想も下

ビジネス

日産と英モノリス、新車開発加速へ提携延長 AI活用

ワールド

ハマス、新たに人質3人の遺体引き渡す 不安定なガザ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中