最新記事

長距離鉄道

ケニア長距離鉄道開業、独立以来の大事業--中国が支援

2017年6月1日(木)15時16分
コナー・ギャフィー

ナイロビとインド洋に面したモンバサを4時間半で結ぶ。従来線では12時間かかった REUTERS

ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は31日、ケニアの首都ナイロビとインド洋に面した港湾都市モンバサを結ぶ鉄道路線の開通を宣言した。

この路線整備はケニアが1963年にイギリスから独立して以来、最大のインフラ事業で、中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一翼も担っている。

【参考記事】ロンドン直通の「一帯一路」鉄道で中国が得るもの

政権のごたごたで外交政策をまだまともに立案できないドナルド・トランプ米大統領を尻目に、中国は着々とアフリカに橋頭堡を築き、影響力を拡大している。

ケニアの新しい鉄道の5つの特徴を見てみよう。

■中国が出資し建設

総工費38億ドル、全長約480キロの鉄道を完成させたのは、中国の国有企業・中国路橋工程有限責任公司だ。中国は昨年10月に開通したエチオピアの首都アジスアベバと紅海に臨むジブチの首都ジブチを結ぶ鉄道の整備事業も手掛けた。

英フィナンシャル・タイムズによれば、ケニア向けだけでも2016年の中国の輸出は50億ドルに上り、10年と比べ3倍に増えた。アメリカの対ケニア輸出は7億8000万ドルにすぎない。

【参考記事】何もなかった建設予定地、中国-ラオス鉄道が描く不透明な未来

■「東アフリカ鉄道網」の一部

ナイロビ=モンバサ路線は、中国が出資する東アフリカ鉄道網整備事業の第一段階だ。この路線は将来的にはケニアの西のウガンダ、コンゴ民主共和国、ルワンダ、ブルンジ、北の南スーダン、エチオピアにも延伸される。

【参考記事】何もなかった建設予定地、中国-ラオス鉄道が描く不透明な未来

一足飛びの進歩

■低コストで迅速な輸送

これまでナイロビ=モンバサ間の移動は、運賃の高い飛行機か、悪路で9時間かかるバスを利用するしかなかった。旧鉄道では12時間もかかった。新鉄道では4時間半。ケニヤッタ大統領は国有の鉄道会社に2等旅客の運賃を700ケニアシリング(6.77ドル)以下にするよう命じた。最低でも1200ケニアシリング(11.61ドル)もするバス料金より大幅に安い。

■ケニアの誇り

ナイロビとモンバサを結ぶ旧鉄道は植民地時代にイギリスが建設したもので、建設工事で多くのケニア人が亡くなったため、地元の人々は「ルナティック・エクスプレス(狂った急行)」と呼んでいた。新鉄道の名称は「マダラカ・エクスプレス」。マダラカはスワヒリ語で、責任、権限を意味し、ケニアには自治の獲得を祝う「マダラカ・デー」(毎年6月1日)という祝日がある。

■破壊工作は死刑

開通直前にも、何者かが柵や杭を倒すなど破壊工作を行い、新鉄道には安全面で懸念が持たれている。8月の大統領選で再選を目指すケニヤッタは新鉄道の完成を1期目の成果としてアピール。破壊工作には極刑で報いる構えで、開通式で新法を制定すると宣言した。

「神よ、許したまえ。すべてのケニア人の資産、われわれの子供たちの資産を破壊した罪で起訴され有罪になった者には、私は絞首刑による死刑執行を命じるつもりだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU・仏・独が米国非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中