最新記事

スキャンダル

ナチスに心酔するドイツ軍兵士がシリア難民になりすましてテロを計画

2017年5月11日(木)18時50分
モーゲンスタン陽子

Hannibal Hanschke-REUTERS

<ドイツが連邦軍のスキャンダルに揺れている。テロ計画の容疑者が連邦軍兵士で、調査をしてみると、ナチス思想を支持していた上に、シリア難民になりすまして「二重生活」を送っていた...>

4月末にテロ計画容疑で逮捕されたドイツ連邦軍将校の取り調べが継続中だが、9日、さらに別の将校が逮捕され、暗殺標的リストにガウク前大統領やマース法相などの左派政治家が含まれていたことがわかった。

最初に逮捕された将校はまた、シリア難民として難民申請をし「二重生活」を営んでいたことが判明しており、国を支える組織や制度を巻き込んだ一連のスキャンダルに衝撃が走っている。

シリア難民になりすます

先月末のシュピーゲルの報道によると、フランコ・Aと伝えられる28歳の将校が最初に拘束されたのは今年1月末。ウィーン国際空港のトイレの送水管で、装填されたピストルが見つかったのがきっかけだった。職員は送水管に警報器をつけ武器を放置、取りに来たフランコ・Aを取り押さえた。

オーストリア当局がフランコ・Aをドイツ連邦刑事局BKAに受け渡す際に指紋を照合すると、該当した人物はなんとフランコ・Aではなく、ダヴィド・ベンヤミンというシリア難民だった。アラビア語は話さず、フランス語も片言であるのに、ダマスカスの果物商人の息子でキリスト教徒として、2015年12月から2016年1月にかけて難民申請をし、月400ユーロの補助金や住居支援を得ていた。 

フランコ・Aの配属はフランス国内だったが、なぜ難民としての生活を続けながら同時に従軍が可能だったのか。BKAは「フランス配属というだけで、彼が毎日そこに逗留しなければならないというわけではない。非番時には自由に移動できることになっている」と述べていたが(「ツァイト」)、今回、フランコ・Aのフランス不在が問題にならないよう助けていた同僚もフランスにて拘束された。

泳がせて監視の末、極右グループを発見

BKAは2月17日にフランコ・Aの公式調査を開始していた。通信記録の監視により、彼が極右思想の持ち主であることを発見。ワッツアップ(ドイツで主流のチャットアプリ)の極右グループでは、外国人を口汚く罵る会話が盛んに交わされていたという。しかも、ウィーンでのピストル放置事件の目撃者の一人とされていた兵士が同極右グループの一員であることも発覚した。また、2014年にA はフランスの大学にナチス思想を支持する修士論文を提出していた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中