最新記事

フランス政治

フランス大統領選、勝者マクロンは頼りになるのか

2017年5月8日(月)17時57分
ジョシュ・ロウ

マクロン陣営としては、もし選挙戦で掲げた経済改革が軌道に乗れば、白けていた有権者も熱意を取り戻すと期待しているはずだ。だがそこにたどり着くまでには多くの戦いが待ち受けており、マクロンはすぐ国民にそっぽを向かれる恐れがある。

親ヨーロッパ票

フランスの三色旗が激しく振られるマクロンの集会では、常に多くのEU旗も共に振られていた。1年前、イギリス国民がEU離脱を決めた後、これはEUの終わりの始まりではないかと考えた人もいた。だが日曜の投票は、EUはまだまだ終わっていないことを再び示した。

フランスを率いるマクロンは、ドイツと共にEUの頂点に立ち、EUの未来を形作る上で大きな役割を果たすことになる。

イギリスの政治家は、イギリスがEUと離脱のための条件交渉に入る前に、マクロンの立場を知りたがっている。これまでの言動から判断する限り、マクロンは対英強硬派で、イギリスはEUを脱することで何らかの罰を受けなければならないと考えている。「私は強硬なイギリス追放派だ」と、彼はモノクル誌に語っている。

ロシアに対するEUの経済制裁を緩めることはなさそうだ。ロシア政府はマクロンの勝利を喜ぶまい。マクロンは決戦投票に残った4人の候補者のなかで唯一人、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との関係改善に反対していた。

同時にマクロンは、EUは改革すべきだと考えている。ユーロ導入国同士の連携を支持し、財政政策の調和を図るためにEU財政相も置くべきという立場だ。

盗まれたメール

米大統領選では、民主党候補のヒラリー・クリントン陣営や民主党のサーバーがハッカーに侵入されたというニュースが次々と、何日も、話題になった。

マクロン陣営も似たようなハッキング被害に合い、何者かがそこから盗み出された電子メールを電子掲示板に公開した。だが、効果は極めて限られていた。

一つの原因は、フランスの選挙管理委員会がメディアに対し、盗まれたメールの詳細を報道すれば刑事罰に問われることになると警告していたから。フランスの選挙法は、投票直前に選挙結果を左右しかねない政治的な報道をすることを厳しく制限している。

またマクロン陣営によれば、メールには本物に混じって相当数のまがい物も混じっていた。

だが投票が終わった今、ジャーナリストたちは改めてメールを隅から隅まで調べることだろう。もしスキャンダルの種がそこにあれば、総選挙の日までマクロンを苦しめることになる。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、3会合連続で金利据え置き 総裁「関税動

ワールド

トランプ氏、インド関税25%と表明 ロ製兵器購入に

ワールド

トランプ氏、関税発動期限の延長否定 8月1日は「揺

ワールド

トランプ氏、FRBに利下げ改めて要求 「第2四半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 10
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中