最新記事

イギリス社会

英国警察はなぜ丸腰? ロンドンのテロ事件受けて変わるか?

2017年3月27日(月)14時00分
松丸さとみ

テロを受けて銃携帯に傾くか?

2015年11月にパリで発生した同時多発テロを受け、当時のテリーザ・メイ内務相(現首相)は、パリのような攻撃を受けた場合でも対応できるように、武装警官を大幅に増員させる方針を発表していた。

しかし実際は、武器使用を志願する警官が少なく人集めに苦労していると、デイリー・メールが同年3月に報じていた。警官が銃を持ちたがらないのは前述の理由のほかに、発砲して死者が出た際に、自分が加害者として起訴されるのを恐れている警官が多いのが理由らしい。

ガーディアンによると、今年1月にロンドン警視庁の警官1万1000人を対象にして行った調査では、「警官は常に銃を携帯すべき」との回答はわずか26%だった。また、「いかなる状況であれ、任務で銃を携帯したくない」と回答した警官は12%いた。「専門の武装警官を増やすべきだ」と回答したのは43.6%、「ロンドンにいる武装警官の数は十分ではない」と答えたのはわずか6%にとどまった。一方、全警官にテーザー銃(相手に電流を流す非殺傷武器)を持たせるべきだと回答した警官は75%に上った。

インディペンデントによると、今回のテロ事件を受けて国会議員からは、議事堂や空港など、テロリストの目標になりやすい場所をパトロールする警官は武装すべきではないのかという声が上がっている。しかしメイ首相は、実際にどの警察業務で武装するかを決めるのは警察当局である、と回答した。

ロンドンは、1970年代から2001年まで断続的に続いたIRAによる爆弾攻撃や、2005年の同時爆破事件など、これまでもテロ攻撃に無縁だったわけでは決してなかった。それでも、警官は銃不携帯を貫いてきた。恐らく今後も、全警官が銃で武装することは少なくともしばらくはなさそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、8月は5.4万人増 予想下回る

ビジネス

米の雇用主提供医療保険料、来年6─7%上昇か=マー

ワールド

ウクライナ支援の有志国会合開催、安全の保証を協議

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中