最新記事

北朝鮮

北朝鮮外務次官訪中を読み解く――北朝鮮の狙いと中国の思惑

2017年3月1日(水)17時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

会合では北朝鮮による兵器開発の収入源や違法な活動を制限するための対策を話し合ったほか、日米韓がそれぞれの独自制裁措置を進めて圧力を強化するとともに、北朝鮮をテロ支援国家と再指定することも協議したようだ。

ロシアの6ヵ国協議のロシア首席代表、モルグロフ外務次官も北京入り

2月28日、6ヵ国協議のロシア首席代表であるモルグロフ外務次官も北京入りした。中国外交部の孔鉉佑外務次官補と会談する。テーマは中露東北アジア安全問題であり、朝鮮半島情勢に関して意見交換をすると、中国外交部は報道している。

おそらく、中国が主導する6ヵ国協議に関して、中国抜きで日米韓首席代表がワシントンで話し合ったことに対して、THAADの韓国配備を、中国と同程度に警戒しているロシアと話し合うことによって、日米韓の結束を牽制したいのだろう。

こうなると、外交手段で北朝鮮問題を解決しようとする6ヵ国協議までが、「THAADの韓国配備」の賛同国と反対国によって二分されたことになる。

中国が2月18日に、北朝鮮からの石炭の輸入を2月19日から年末まで停止すると発表したことに対し、北朝鮮は2月23日、名指しを避けつつも中国の制裁措置を非難している。

そのため、今回の北朝鮮外務次官らの訪中は、中国との会談で制裁措置などに関する事態の打開を図りたいためだろうとする分析が多いが、そういうことではないと思われる。

本日からは、米韓合同軍事演習も始まる。

以上から言えることは、北朝鮮外務次官らの訪中は、中国の複雑な国際情勢が絡んでの結果だということだ。口先ではきれいごとを言っているが、真の米中協力など、THAAD問題が解決しない限り望めそうにない。朝鮮半島が火薬庫となるか否かの瀬戸際なのである。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中