最新記事

米軍事

トランプ、米国防費「歴史的増強」の財源はどこにあるのか

2017年2月28日(火)18時00分
ジョン・ハドソン、モリー・オトゥール

国務省は、トランプから要求されている予算削減の規模についてコメントを避けたが、マーク・トナー報道官代理によれば、国務省は「優先される予算について、ホワイトハウスならびに行政予算管理局と協議しているところ」だという。「国務省は引き続き外交政策に力を注ぎ、アメリカ国民の安全と繁栄を推し進めていく」とトナーは言う。

いずれにせよ、最終的に予算案が承認されるには、上院で60票(5分の3以上)を獲得しなくてはならない。トランプの初の予算案について、多くの民主党議員は激怒している。一方、共和党議員たちは、さらに詳細がわかるまでは様子見のようだ。

民主党議員は、政治的姿勢を問わず、今回の予算案が否決されるのはすでに確実だとして激しく非難し、軍事費増額の必要性を疑問視している(今回の予算案で提案された増額分は、ロシアの総国防費とほぼ同じだ)。アメリカの2017年度の国防費は年間およそ6000億ドルで、世界でダントツのトップ。一方、対外援助と国務省の予算は年間500億ドルだ。

対外援助はお荷物、の嘘

共和党のジョン・マケイン上院軍事委員会委員長(アリゾナ州選出)を筆頭に一部の共和党議員は、国防費を6400億ドルに拡大する独自の予算案を示しながらトランプ案では「少なすぎる」と批判した。「世界中に紛争が広がる今、多少の増額では平和を守れない」

米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の研究者でトランプの政権移行チームに参加したジェームズ・カラファノは、国防総省の予算は「多くの外交使節団を派遣するオバマ政権の目玉政策」で無駄遣いされてきたと指摘、国務省予算の大幅な削減を支持した。

「オバマ政権は、テロリスト予備軍の過激化を阻止する対策から男女平等の実現に至るまで様々な成果を上げたと主張したが、どれほど効果があったかは疑問だ」

同じ共和党でも、リンジー・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出)やジョン・ブーズマン上院議員(アーカンソー州選出)、ケイ・グレンジャー下院議員(テキサス州選出)などのベテラン議員は、対外援助資金に充てる予算確保を強く支持している。

だがトランプは大統領選で繰り返し、米政府による対外援助は無駄だらけだとやり玉に上げた。そのせいか国民の間には根拠のない負担感も募っている。2009年以降、アメリカ人を対象に米連邦予算のうちどれほどの割合が対外援助に充てられていると思うかを尋ねる世論調査を実施してきた米カイザー・ファミリー財団はによると、平均的な回答者は25%程度だった。実際は、実際はイスラエルやエジプトへの軍事支援を含めても1%以下だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中