最新記事

環境

【写真特集】世界が抱える環境移民という時限爆弾

2017年1月18日(水)18時00分
Photographs by ALESSANDRO GRASSANI

<セイス村(エチオピア)>ケニア国境沿いの村々ではずっと降雨がなく、人々は食べ物も飲み物も手に入らず困窮している。飢餓で最も苦しみ、犠牲になるのは老人と子供だ

<環境の悪化で都市へ移住する人々の現状を世界各地で追った>

 環境の悪化や気候変動による自然災害などのため住む場所を離れなければならない「環境移民」。彼らは不発弾のような存在であり、遠くない将来、世界はその経済的・社会的な負担に直面するだろう。

 現在5000万人いる環境移民は50年までに45人に1人、つまり2億人に上るとされている。その90%は途上国の人々。彼らは豊かな国ではなく、自国の都市部へ移り住んで新たな収入の道を探ろうとする。08年には史上初めて世界の都市人口が農村人口を超えたが、今後は気候変動と環境移民で都市部はさらに肥大化していくだろう。

【参考記事】排気ガスを多く浴びると認知症になりやすい? カナダ研究機関の調査結果で

 写真家アレッサンドロ・グラッサーニは、迫りくる環境移民の問題について長期取材を行った。目的は、地球と都市の環境がどのように悪化しているかを人々に知ってもらうこと。そして都市へと移る環境移民たちの物語を記録し、社会に与える深刻な影響を明らかにすることだ。

 モンゴル、バングラデシュ、ケニア、ハイチは環境移民によって最も打撃を受ける国々だという。グラッサーニもこれらを取り上げ、厳しい環境と闘う地方の人々と、首都のスラムで暮らす貧しい環境移民の姿を対置している。近い将来、状況はさらに危機的になるはずだ。


KENYA/ETHIOPIA

ケニアの農村人口は気候変動により、アフリカの中でも特に深刻な打撃を受けている。干ばつに加え、牧畜の餌や水をめぐる部族間の抗争に苦しむ人々は、首都ナイロビでのよりよい暮らしを夢見る。09年の国連人間居住計画の発表によれば、ナイロビにいる環境移民の74%が91~08年に移住してきた人々だ


ppenv02.jpg

セイス村(エチオピア)
エチオピアのマリル族が住む地域では日照りのせいで食べ物も飲み物もなく、日々、何十頭という動物が死んでいく


ppenv03.jpg

ナイロビ(ケニア)
首都ナイロビでは面積の5%を占めるスラムに人口の約60%が密集。アフリカ最大級とされるキベラスラムでは、約100万人が非人道的な環境下で暮らす。気候変動や環境移民の影響を受け、ナイロビの人口は急速に増加している


ppenv04.jpg

ナイロビ(ケニア)
ナイロビ第2のスラムであるマサレの人口は約50万人。この辺りではトタン小屋に交じって、1つの部屋に多くの人がひしめいて暮らす建物が並ぶ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官、中東の安定強調 イスラエルなどと電話協

ビジネス

中独は共通基盤模索すべき、習主席がショルツ首相に表

ビジネス

中国GDP、第1四半期は前年比5.3%増で予想上回

ワールド

米下院、ウクライナ・イスラエル支援を別個に審議へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 5

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 8

    イスラエル国民、初のイラン直接攻撃に動揺 戦火拡…

  • 9

    甲羅を背負ってるみたい...ロシア軍「カメ型」戦車が…

  • 10

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中