最新記事

イデオロギー

崩壊から25年、「ソ連」が今よみがえる

2017年1月6日(金)11時00分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

 ソ連と同様に化石的存在である日本での「保守・革新」対立を尻目に、世界はこれから弱肉強食の時代に突入しようとしている。ソ連崩壊後のアメリカ一極化はイラク戦争で頂点に達した。だがその戦費の垂れ流しは国債の乱発をもたらし、財政・金融両面でアメリカをむしばむ。08年の世界金融危機を機に、アメリカは地位を後退させた。オバマ政権は国外への派兵を避けたのはいいが、明確な見通しもなしに他国を「民主化」する動きをやめず、そのため、ウクライナやシリアでは先の見えない紛争を生み出した。

 こうした「無極化世界」の混乱のなか、トランプはそれに背を向け、自国の利益だけに集中しようとしている。それによってこれから起こる「製造業の奪い合い」は、近世に行われた英蘭仏、重商主義諸国のゼロサム・ゲームの再現となるだろう。

【参考記事】「アレッポの惨劇」を招いた欧米の重い罪

 グローバル化の中では、製造業に頼らずとも富と雇用を生むのは可能であるにもかかわらず、トランプが展開する製造業の奪い合いは、「国家」という時代遅れのマシンを再び舞台の中央に引き出す。国家が企業に命令して、外国への工場流出を止めるようになるからだ。

 国家が経済の主人面をし始めると、「ノマド」(遊牧民族、実力で世界を渡り歩く人間)など、ひと頃はやった強い個人はしばし休息となる。これからの数年は、「国家」の意味が増すだろう。国家が公平な分配を保証する「国家社会主義」......。

 何のことはない。ソ連的なもの――ドイツではナチズムと呼ばれた――は、世界中でよみがえったのだ。

[2017年1月10日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハメネイ師息子モジタバ師、後継有力候補との情報 米

ビジネス

プーチン氏、欧州向けガス供給の即時停止の可能性を示

ワールド

イラン交戦は国連憲章違反、学校攻撃にも深い衝撃=独

ワールド

トルコ、イランの弾道ミサイル迎撃 NATO防空シス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中